ペース・ディベロップメント経営破綻

ペース・ディベロップメント社は5月5日、タイ中央破産裁判所に事業再生手続きの適用を申請、事実上の経営破綻をしました。

上場ディベロッパーの倒産は新型コロナウイルスの影響と捉えられるものの、ペース社は3年ほど前から経営が悪化しており、今回の景気低迷で留めを刺されたというのが正確な理解かと思います。


※ペース社経営破綻 出典:Newsclip

ペース社の名前は聞き及びのない読者も多いかと思いますが、リッツ・カールトンレジデンスの開発を手掛けた会社と言えば最も分かりやすいのではないでしょうか?

マハナコーンの名称を付けられている一際目立つランドマークは、高さ314メートル、総階数77階建、低層部分はホテル、その上は200ユニットのコンドミニアムで運営はリッツ・カールトン社が手掛けています。正式なオープンは2016年。


※マハナコーンタワー(リッツ・カールトンレジデンス)

コンドミニアム部分はヨシダ不動産もその販売に携わったのですが、完成が大幅に遅れ、お客様には大きなご迷惑をかける結果となりました。但し、完成後は価格が大幅に上昇したので、買われたお客様にとっては結果的にいい投資になったのではないかと思います。今回のコロナの影響は受けるでしょうが、この物件に関しては軽微なものに留まるだろうと推測します。

リッツ・カールトンレジデンス以前はFicus Lane(プラカノン)、Saladaeng Residence(シーロム)しかない為知る人も少なかったと思いますが、リッツ・カールトンレジデンスの開発で一挙に知名度が上がりました。

ランスアン通りのNimit Langsuan(ニミット・ランスアン)、ホアヒンのゴルフクラブ、ラグーン、ラグジュアリービラの総合開発Mahasamutrと快進撃は続いた後、何を血迷ったのかグルメコーヒーチェーンDean&Delukaを買収。Dean&Delukaは世界的に有名ですので皆様も良くご存知かと思います。このニュースを耳にした時、タイのフランチャイズ権を買ったと思っていましたが、アメリカの本社ごと買収したと聞き驚きました。


※Mahasanutr(ホアヒン)

何で?と思っているのも束の間、買収後の経営は奮わず、あれよあれよという間に業績は低迷、株価は落ち込んで行きました。一時は北海道ニセコのリゾート開発も発表していましたが、計画段階でプロジェクトは頓挫し、話題にも上らなくなりました。

経営不振の影響でニミット・ランスアンの開発は1年以上に渡り、建築がストップした状態に陥りましたが、救世主として免税店大手のKing Power(キングパワー)が登場。因みにキングパワーはプレミアリーグのサッカークラブ、レスターシティのオーナーでもあります。

キングパワーはマハナコーンのホテル部分とコンドミニアムユニットの一部、ニミット・ランスアンのユニットの一部を購入する形で資本注入したと記憶していますが、これを景気にペースは資本不足から一時脱却し、ニミット・ランスアン の建築も再開しました。確か昨年の3月ぐらいの事だったと記憶しています。


※ニミット・ランスアン

僕自身もニミット・ランスアンの底値買いに少なからず興味を持ち、かなり突っ込んだ形でモニターしていましたが、建築再開を目処に価格が上がり始めたのでチャンスを逸したのですが、今思えば結果的についていたようです。

参照過去ログ:今後の動向が気になるNimit Langsuan

リッツ・カールトンレジデンスは完成後の不具合も少なからずありましたが、申し分のないグレード感、スタイリッシュなデザイン等々の完成度は間違い無くバンコク最高ランクに位置付けられ、これを凌ぐと考えられるのは川沿いのフォーシーズンズ・レジデンスぐらいでしょう。

ニミット・ランスアンの今後の開発が気になるところですが、こちらもまたピカイチのプロジェクトですので、引き受け手が明確になり、市場低迷の中で魅力的なリセール価格(プリセール完売済み)が出てくるのであれば、是非購入を考えたい物件ではあります。

余談にはなりますが、ペース社の社長Sorapoj Techakrasiri(Mr.)は、大手ディベロッパーLPN社(ルンピニ・グループ)を創設したファミリーの出身(創設者の息子)で、タイでは華麗なる名門ファミリーの一族出身のサラブレッド。

LPN社はルンピニ〜のブランド名でエコノミークラスのコンドミニアムをタイ各地で展開しているが、こちらは堅実経営のようで業績は悪くありません。

ルンピニシリーズは外観も統一感がありますので、下の写真を見れば「あ〜、あれか。」と気付く人も多いのでは無いかと思います。購買者層はタイ人が圧倒的に多く、実需の購入が多いのでは無いかと見受けます。スクムビットソイ24のThe Lumpini 24だけは例外的にラグジュアリークラスの物件でこちらは多くの日本人駐在員世帯が住んでいます。


※LPN社のコンドミニアム

一族によるエコノミークラスの物件開発に反発する形で、独自高級路線をひた走ったSorapoj氏は残念ながら敗北を期す結果となりましたが、僕自身はペース社の開発物件は大好きです。コーヒーチェーンなど買わなければ良かったのに、と思っています。

Sorapoj氏が再起して、タイのコンドミニアム業界に新たな一石を投じて欲しいものです。

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