底値買いのベストな方法 (その4)

前回は市場活況期の取引と価格の動きを説明しましたが、現在の市場状況にはそぐわない事は皆さまもご存知の通りです。

それでは売れない不人気コンドミニアム、もっとも現在では活況期であれば間違い無く人気が出た筈の条件の良いプロジェクトですらその憂き目にあっていますが、それらの取引と価格の動きを説明していきます。

前回同様に図にまとめましたので、参照下さい。


※不人気プロジェクト、コンドミニアムの取引状況と価格の推移

売れないプロジェクトですので、人気プロジェクトの時の様な「完売」ラインはありません。価格が全く逆の動きで右肩下がりとなります。理屈通りと言えばそこまでなのですが、着目すべきなのは2次購入者がいる点です。バーゲンハンターに他なりません。

プロジェクトの売れ行きが悪いと、ディベロッパーは直ぐに値下げとはしないまでも、バルクセールディスカウント、内装・家具無料、期間限定利回り保証(2~5年ぐらいが多い)等のプロモーションを展開しますので、実質的販売価格は低下していきます。中には買い戻し保証等といった極端な手法をとるプロジェクトもあります。利回り保証や買い戻し保証には複雑な付帯条件がありますので、契約書を読んできっちり理解する必要があります。

プロジェクトが完売にならない中、転売ヤーはディベロッパーの販売状況を見ながら、あの手この手を使って精力的に独力で販売を仕掛けていきます。売れる人気プロジェクトの場合は、転売をディベロッパーに委託できますが、売れない不人気プロジェクトの場合、ディベロッパーは自分の在庫を優先します。かつての味方が敵に回ってしまうので、頼るわけにもいかず、不動産業者に委託する以外は個人広告、SNSを駆使して孤軍奮闘する事になります。委託を受ける業者にしても、自分で売ったわけでもない物件の場合何の負い目もないのでさほど真剣にはなりませんし、そういった市況ではいくらでも他に売る物件があるのが通常です。

売れない物件を抱えたまま決済時期が迫ってくると、決済資金を持たない転売ヤーは窮地に陥っていきます。プレイステーション5や任天堂スイッチとは投資額が桁外れに違いますので、夜も眠れないといった不安感に苛まれ、値下げを段階的に行い始めますが、多くの購入者は価格に差が無ければよほどいい条件のユニットでも無い限りディベロッパーからの直接購入を優先します。更に決済日が近付くと論理的な値下げから恐怖感を伴いヒステリックな投げ売りへと状況は悪化していきます。既に支払った金額は物件価格の20~30%ですので、そこから吐き出していく消耗戦となるのです。

一方、その物件を買いたくて虎視眈々とバーゲンセールを狙っていた購入希望者にとっては、又とない底値購入チャンス到来となります。ディベロッパーの販売価格、決済金を持たない1次購入者の価格をじっくり比較&選択して購入していきます。図中のBがそのケースとなります。

不人気プロジェクトとして説明しましたが、現在のような市場低迷期においては条件が揃い、価格的にも魅力的に思えるプロジェクトでもその範疇に陥るケースが少なくありません。更にダウンサイドに向かうリスクはゼロではありませんが、投資将来性の明るい物件を安価に手に入れる事が可能な好機なのです。

2019年以降に完成し決済&登記期限を迎えたプロジェクトに一般に見られる現象なのですが、それらのプロジェクトは2016年以降にプリセールが開始されています。その頃は活況期のピークを迎えており、20年近くに及び成長が続いたタイ不動産市場では、販売不振に陥る状況などは誰もが夢にも思わなかった頃に売り出されました。

お決まり通りに、富裕層顧客はVVIPセールで大量買い、転売ヤー軍団も我先にとプリセール会場に殺到しました。それまでに味を占めていたディベロッパーの中には、多くのユニットを売りに出さずに温存していたところも少なくなかった筈です。中には完売となったプロジェクト、又は偽装完売をしたプロジェクトもありましたが、分かり易く理解する為に完売ラインは参照図では設けていません。

決済できない、投資見通しが悪いので損切りする、コロナ禍の為現地で物件確認ができない等々の理由で、キャンセル物件がディベロッパーに差し戻しになるケースは珍しくありません。特に中国人バイヤーの中でその動きが多く見られると聞いていますが、これは外国人購入者の半分を中国人が占めている関係で際立って見える、と言えるのでは無いかと思います。

差し戻しによりディベロッパーの完成在庫は更に積み上がり上がりますので、完成後もディベロッパーは様々な手法を駆使して、在庫一掃を目指してプロモーション販売に励みます。図中のCがそのケースです。

大雑把ではありますが、①最初は大した値引きをせず市場の反応をモニター→②売れるまで値引きを含め多種多様なプロモーションを打つ→③反応が悪いと過激になる(=購入者にとってはより好条件になる)→④売れて在庫が少なくなると価格、条件を上げる→⑤完売、というのがディベロッパーの販売戦術の流れとなります。

但し、ディベロッパーによっては、大きく値引き等はせずに時間をかけて我慢強く完成在庫を売る、といった手法を取るところもあり、そのケースではいくら待ってもなかなか好条件が出てきません。待ち惚けを喰らわせられる事になりますが、勝手に期待して待っているだけですので、文句を言う筋合いでもありません。プロジェクトによっても違いはありますが、シンエステート(ESSEシリーズ)、メジャー等のコングロマリット系ディベロッパーに見られます。

底値買いのベストな方法=参照図のBとCの買い方、との結論になりますが、どちらがいいのか?に関しては、1時購入者の値付けといった偶然性、ディベロッパーの完成在庫一層の手法に左右されます。後者はある程度読めますが、前者は販売サイトやSNS等の広告を定点観測する必要があります。個人売買では騙される等を始めとした様々なリスクが伴いますので、海外にいて底値買いをするのはハードルが高い技と認識せざるを得ないのかも知れません。

但し、今後1〜2年は底値買いの機会が続く筈ですので、バンコク不動産投資に興味のある人には又とないチャンスである事も確かなのです。

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