底値買いのベストな方法 (その3)

コロナ禍の今になっては夢のような話ですが、2010〜2017年頃の人気プロジェクトが飛ぶように売れた頃は、プリセールともなればいいユニットを手に入れたい購入希望者は前の晩から並日始め、販売開始直前にはプリセール会場の外は人で溢れているような状況でした。

参照過去ログ:コンドミニアムプリセールの現場風景
NOBLE BE 19プリセール初日は大盛況

上記のような市場活況期に即完売したような人気プロジェクトのコンドミニアムはどのように売買され、価格はどのように推移したのかについて簡単に下図にまとめましたので参照下さい。


※人気プロジェクト、コンドミニアムの取引状況と価格の推移

初日の売行きが好調ともなれば、ディベロッパーは価格を吊り上げ始めます。初日から全てのユニットを売り出すことはせず、幾つかのフロアに限定して販売するのが一般的です。それ以前にVVIPセールスなる重要顧客を対象としたうちうちの販売で既に結構な数のユニットが売約されている事も珍しく無い、というよりも極々通常の事に過ぎません。

そして次に販売する区分に関しては、既に値上げされています。日本のディベロッパーが第一次1期目、2期目等々と称して売る手法と何ら変わりはありません。どれが一番売れそうなユニットなのか?眺望、階高、間取り、事前市場調査等々で細かく予想を立て、出来るだけ高く売る為の算段をする、という点に関しても同様です。

そして全ユニット完売、となると一次購入者からリセールユニットとして購入する事になるのですが、ディベロッパーは一次購入者からユニットの販売委託を受けますので、一次購入者から直接購入するケースもあれば、委託を受けているディベロッパーや不動産業者の仲介を通じて購入する事もあり、市場は混沌としてきます。

当然ながら人気プロジェクトの中でも需要が高い人気ユニットは利鞘がどんどん乗せられていきますので、価格がプロジェクト全体の平均値を大きく上回り上昇していきます。転売ヤーの人達(=転売目的の一時購入者)はどれが売れるか?をかなり学習して購入します。角部屋、いい間取りなのに平米単価が低い、眺望が抜け始める階数、隣が非常階段で他のユニットに隣接していない等々さまざまな要素を検討します。プリセール会場では微笑みの国タイランドに似つかわしくない、真剣勝負の張り詰めた空気が漂い、厳しい表情を浮かべてフロアプラン、間取り図、価格表と睨めっこをする、といった戦々恐々たる世界が展開するのです。

これは売れると見て取った一購入者の多くは、更に価格が上がる事を見越して、決済期限の半年ぐらい前まで静観の構えを取ったりもします。これは富裕層投資家に見られる戦術となるのですが、「希望価格で売れなければ、購入して賃貸に出しても一向に構わない。」といった余裕の態度で臨みます。一方、決済資金を有していない一時購入者に関しては大きなリスクは取れませんので、ちょっとした利鞘で手仕舞いする事も多くあります。

それを購入した2次購入者は、更なる利鞘を乗せて3次購入者に転売します。決済直前に出回るリセール物件が3次、4次の購入者から売られているケースは、人気プロジェクトにおいては珍しくありません。上図におけるCがそのケースに当たります。

上記のような東南アジアらしい猥雑な混沌を帯びながら市場が形成され、そこには多種多様な参加者が少なくない利益を手中にしていたのです。
そのような不動産ゴールドラッシュも今は昔となってしまいました。

次回は、市場低迷期のプリセール物件の取引状況と価格の動きを説明します。そして、それを理解する事が今回のテーマとなっている「底値買い」の方法論を示唆する事になるのです。

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