バンコク築深コンドミニアムVS新築コンドミニアム (その8)

築25年のラスコリナスは、周辺新築物件との比較において、投資物件として分が悪い事はご理解頂けたかと思います。

平米単価が半分程度というのは割安に感じますが、実際は日本における新築・中古マンションの価格差とほぼ変わりません。


※首都圏新築・中古マンション平均価格差 (出典:オウチーノニュース)

2017年発表の国土交通省の資料によれば、首都圏マンションの新築と築平均20.7年の中古物件の平均平米単価は、それぞれ85.9万円、50万円で、マイナス約40%の価格差となっています。

ラスコリナスは築25年で現行の新築物件価格からマイナス50%弱の価格差ですので、大体同じという事になります。

ここで忘れていけないのは、価格上昇率の決定的な違いです。

過去ログ:バンコク築深コンドミニアムVS新築コンドミニアム (その1) でも掲載しましたが、下はバンコクのコンドミニアム価格推移(2000〜2014年)のグラフです。見つけた資料の中で最も長いスパンでの価格推移となっているものがこのグラフだった為2014年までとなっていますが、2014-2019年の間も平均リセール価格は大きく上昇しています。


※バンコク高級コンドミニアム地区別平均平米単価 2000-2014年 (出展:CBRE)

次は日本の首都圏と近畿圏における中古マンションの価格推移(2002〜2017年)のグラフです。グラフ自体はマンション売却ネット(tower-ten.jp)が不動産経済研究所の資料を元に作成したものです。数字は成約価格ではなく希望販売額がベースとなっていますが、その点はバンコクのグラフもasking priceですので条件は同じです。


※首都圏・東京23区・近畿圏マンション価格の推移 2002-2017年 (出典:マンション売却ネット)

バンコクは2000年からの14年間で4倍以上平均価格は上昇しており、日本の首都圏1.47倍・東京23区1.51倍・近畿圏1.18倍を圧倒しています。

つまりよほどダメな物件を掴んでいない限り、又は中古物件を高値掴みしていない限り、1990〜2017の間にバンコクの物件を購入した人のほぼ全員がキャピタルゲインを得ている事になります。

ラスコリナスも同様で、5万バーツ前後で新築時に分譲されたと推測すれば、25年経過した現在でも2.5倍以上の価格で売り出されている事になります。

尤も、この頃のコンドミニアムを新築で購入した人にはごく一般的な話であり、僕自身も1998年に購入した新築コンドミニアムを賃貸利回り10%以上で約20年間運用し、その後2.8倍程の価格で売却した経験を持っています。余談にはなりますが、購入した時期が通過危機直後だった事もあり、為替益が上乗せされ望外の投資利益をもたらしてくれました。

ラスコリナスを売買、賃貸に出しているオーナーの多くが既に投資利益を得ており、別にこの価格で売れなければ、それはそれで構わない、と言った立ち位置である事はソンキッドガーデンズのオーナーと同様です。

違いがあると言えば、ソンキッドガーデンズは当初のプロジェクトコンセプト、その後の維持管理が高いレベルで実行された故に大きな衰えを見せる事なくレジェンドマンションとして現在も市場に君臨している、他方ラスコリナス、プロジェクトコンセプトは良かったもののその後の維持管理はお世辞にも良いとは言えず現在の地位に甘んじている、といったところでしょうか?

つまり完成後の運用が大きな明暗を分けた、という事になります。そして、バンコクのコンドミニアムにおいては、維持管理の失敗により市場の中で低迷している物件が実は少なくありません。

維持管理以前に、プロジェクトコンセプトにおいて、既にその後の運命を決定付けられているコンドミニアムも少なくありません。

1990年代、2000年代初頭に完成したコンドミニアムで言えば、2.2-2.5メートルの低い天井高が挙げられます。この頃の物件は広いだけに、天井の低さが際立ち大きな圧迫感を感じさせます。又、バルコニースペースをエアコン室外機が占拠、シャワーが一体化したバスタブ、古いキッチンデザイン、寝室の腰高窓等々はラスコリナスの現場レポートでも指摘しましたが、天井高とは異なり、こちらは改装により改善できる部分も多々あります。

不動産とは言え、コンドミニアムにおいてもファッションのように流行り廃りがある点は否めません。

新築コンドミニアムの売り出し時に、ディベロッパーが莫大な広告宣伝費を投入し、「このデザインがカッコいい。新たなライフスタイルだ。」等の大キャンペーンを通じて消費者を洗脳している点は、服飾や自動車業界等と同様です。ファッション業界のようにスカートを長くしたり短くしたり、ズボンのウエストを上げたり下げたり、といった流行創造を業界ぐるみで行うといった次元までは洗練されていませんが、建築においても良いデザインはどんどん模倣されますので、類似する点は多々あります。

どうしても洗脳された消費者は、物差しを単一化されてしまいがちです。

再び話は外れますが、ディベロッパーや販売業者の広告宣伝の物量作戦により、手を出してはいけない立地のプロジェクトまで購入している日本人投資家を多く見受けますが、こうなるとプロジェクトコンセプト云々以前の問題で、物件の完成やら維持管理やらといった議論の前にその投資は必ず失敗する運命を辿る事をお忘れなく。

辛辣にはなりますが、不動産投資に失敗している多くの日本人投資家の皆様に最も多く見受ける敗因がまさにこれです。

話を戻しますと、プロパガンダ戦略により洗脳された消費者は、古いコンドミニアムを見ると新築との大きな見た目の落差が印象付けられ、拒否反応に近い心理状態になってしまいます。実はこれこそが築深マンションが選ばれない一番大きな理由かと思います。

ラスコリナスにおいても、全面改装でデザインを刷新、周囲の新築コンドミニアム以上に利回りを得られるまで売買価格を下げる等の手段により状況は変わってくるものと思えます。但し、既に予想以上の利益を確定したオーナーがそれを積極的に実行するでしょうか?

現段階では、僕は極めて懐疑的です。

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