バンコク築深コンドミニアムVS新築コンドミニアム (その9)

このテーマに関する連載も思いの外長期に及びました。まだまだ伝えたい事が多々ありますが、あまり深掘りすると、他にある読書の皆様の利益に叶うはずの情報がおろそかになってしまいますので、今回で終わりにしようと思います。

前回ブログの最後部分で、築深コンドミニアムのオーナーがユニットを刷新するような全面改装や利回りに見合う販売価格の値下げを積極的に取り組む事は無いだろう、と締めくくりました。

これは、その当時の高級コンドミニアムを購入したオーナーはトップクラスの富裕層に限られており、既に大きな利益を享受した現在、改めて小金の為にあくせくする事は無いだろう、という現地の富裕層の慣習的な発想を踏まえての見方となります。

日本的な発想では共感し難いかも知れませんが、一部の華人系財閥が経済を支配し、貧富の差が日本とは比較にならない程激しいアジア諸国に居住し慣れ親しんでいる人には当たり前のように捉えられる内容かと思います。

暑い東南アジアでも金持ちは汗かかない、とインプットして下さい。

ソンキッドガーデンズのように全面改装されたユニットが多く、今でも賃貸物件として高い人気を維持している物件も中にはあります。但し、それは例外的な成功と見るべきで、だからこそレジェンドマンションなのです。

とは言え、これもオーナーが自分の会社の従業員やファミリーの下僕等に指示してやらせているケースが多いでしょうから、やはり金持ちは汗かかない、という事です。

もう一つ言えるのは、1990年代に建てられたコンドミニアムでも最長で築30年弱程度ですので、建て替え云々の切実な問題に直面するのはまだ先の話でしょうし、冬の無いアジアでは長期的展望という発想は概して希薄です。

全面改装し手頃な価格で賃貸市場に出回れば、立地がいいだけにまだまだ利回りを得るポテンシャルは高いと思いますし、売買価格を下げれば居住目的での購入者を発掘する事も十分可能です。

それにより日本以上に弱いバンコクの中古物件市場が活性化し、新たな不動産市場の幕開けと言ったら大袈裟ですが、これまで無かった局面が生まれる事は確かなのです。

中古市場の流動性を高める事によりかなりの経済効果が創生される筈ですので、官民一体となって取組んで行きたいところなのですが、この「一体が」の形成が本当にタイでは難しいんです。

老朽化が日本以上に激しいタイでは、日本で決められた減価償却期間47年を経過する前には(10年後以降ぐらいには)、これまでの地価上昇も相まって、建て替えや敷地売却等の考えを持ち始める事になるかと思います。

現行のタイのコンドミニアム法では、建て替えや売却には区分所有者100%の同意が必要、と定められており、これが存在する限りは実現不可能かと思います。

日本でも区分所有者法を緩和して80%以上の議決権で決定、容積率を上げる、再開発推進団体設立等々で再開発を進めているようですが、2016年末の時点で全国のマンションストック約10万棟中、再開発が実施されたのはわずか223件、約0.23%と実績は上がっていないようです。

同じく80%以上の議決権で可能なシンガポールにおいては日本とは大きく異なり豊富な実績があります。容積率が上がった建物、老朽化して修繕費用が高い建物、古くなりテナント付けが悪くなった建物、一件当たりが広く格安な物件などが中心となり、建て替え・売却が進み不動産市場の活性化に成功しているようです。

現地ではコレクティブセールス、又はエンブロックと呼ばれる手法で、民間ディベロッパーがイニシアティブを取る中で進められるのが一般的です。ブームが始まった2006、2007年にはそれぞれ75億シンガポールドル、110億シンガポールドル(1シンガポールドル=約78円)、2017年には100億シンガポールドル規模の再開発に成功しており、2018年も120件のコンドミニアムの建物で検討中となっているとの事。このエンブロック効果で大きな富を手にしている人が続出。景気の良い話となっています。

日本の低成長を尻目に高い経済成長が進み、地価が上がった事が成功要因になっている事は間違い無いでしょう。

バンコク中心部で地価の急上昇があった事実はこれまで当ブログでも述べてきた通りなので、法整備する事に再開発の活性化は実現するものと思います。

いざその時が来れば、富裕層の影響力が圧倒的に強いタイにおいては、あっという間に法整備が実行されるのでは無いかと僕は見ています。
築深のコンドミニアムの市場流動性が極端に低いバンコクでは、老朽化問題への取組は長期に及び外国人が不動産投資を行うにおいては非常に重要な要素となります。

キャピタルゲインよりも日本人居住区における確かな賃貸投資を主に推奨してきた当社においても、長期保有においては売却の難しさもあり否定的なアドバイスを行なってきましたが、今後の不動産市場状況の変化次第では更なる長期の投資を推めるシナリオも十分あり得るのですが・・・。

現時点では時期早々と言う事になります。

おすすめ