パタヤのコンドミニアム市場の現状 (その3)

前回までは2011-2015年のコンドミニアム建設ラッシュで積み上がった在庫状況と販売状況、そして3年ぶりにプロジェクト発売が増加に転じた動向を説明しました。

今回はパタヤ地区の今後の将来性に関してスポットを当てたいと思います。

2年ほど前からタイ政府が法制化し推進する大型プロジェクトEEC(Eastern Economic Corridor、東部経済回廊)は、最近のパタヤ地区のコンドミニアム発売時には、今後の将来性を約束する訴求材料として必ずと言って良いほど取り上げられます。

今年5月に発売された人気プロジェクト“エッジセントラルパタヤ”の売り出しの際にも同様でした。パンフレットに掲載された一部を抜粋した下図を参照下さい。


※エッジセントラルパタヤ、パンフレットに掲載されたEEC関連情報

EECはタイ政府が推進する未来構想タイランド4.0(PCソフトのアップグレードみたい)の中で総額5兆円(政府と民間投資総額)を超える目玉プロジェクトで、東南アジアの地域がアセアンから2015年末に発足したAEC(Asia Economic Community、アジア経済共同体)へと経済協力が進む中で、インドシナの中核国としての盤石な地位確立による更なる経済発展を実現するためのプランです。

AECの詳細は、コチラにわかりやすい説明がありますので、参照願います。又、コチラのビデオ(英語)でも詳しく紹介しています。


※AECの中でのEEC

EECのプロジェクトが推進すれば、パタヤ市のあるチョンブリ県、バンコクとチョンブリ県に挟まれたチャセンサオ県、ラヨン県の3件は大きな経済発展を遂げるものと見られております。

EECプロジェクトには、空港整備、高速鉄道、高速道路整備、港湾整備、特定産業の育成、都市開発、病院整備、ツーリズムの推進などが盛り込まれており、直・間接的にパタヤの地区の不動産市場を活性化するであろうと思われる要素が多々含まれています。

それらの中で、よりダイレクトにパタヤ不動産市場に好影響を与えると思われる要素を見ていくことにします。

1. 高速鉄道

ドンムアン空港、スワンナブン空港、ウタパオ空港の3つの国際空港を高速鉄道と結ぶプロジェクト。停車駅としては始発・終点を含めて、ドンムアン空港、バンスー(バンコクの中央駅)、マッカサン(現在のエアポートリンク駅)、スワンナブン空港、チャセンサオ(多数の工業団地)、チョンブリ(多数の工業団地)、シラチャ(多数の日本人が居住、日本人学校あり)、パタヤ、ウタパオ空港、ラヨン(パタヤに続くビーチリゾート、多数の工業団地)が策定されており、最高時速は市街地で160キロ、郊外で250キロになる予定です。
予定通り完成すればスワンナブーン空港からパタヤまでは30〜40分ほどの所要時間になる見通しで、現在は車で90分程かかりますから、所要時間が約3分の1に短縮されます。マッカサン駅からでも1時間ほどですので、バンコク市内からのアクセス時間も半分以下に短縮されます。

 


※バンコク高速鉄道予定停車駅

2. ウタパオ空港の整備

パタヤ中心部から約42キロ、車で1時間程のところにあるバンコク第3の都市空港で、日本人には馴染みがあまりありませんが、中国、ロシア、東南アジアの都市を結んでいます。

日本からの観光客はタイのビーチリゾートと言えばプーケットやサムイ等のイメージが真っ先に頭に思い浮かびますが、バンコクから陸路で行ける、又ビーチリゾートの顔以外にも歓楽街としても名高いパタヤは世界各国のツーリストからの人気全くは衰えていません。

パタヤから最も近いウタパオ空港は、現在ターミナルビルが1つのみで年間最大70万人の受け入れ体制となっていますが、将来的には3つのターミナルビル建設と滑走路の拡張により年間2000万人までキャパシティを拡大する計画です。

この空港も高速鉄道の停車駅となりますので、パタヤまでの乗車時間は15〜20分ぐらいになるかと思います。

3. ツーリズム開発

パタヤ地区を東部経済回廊での最も重要な観光地と位置付け、観光関連のインフラ、人材育成等に投資を行う計画です。

インフラとしては、北パタヤと南パタヤを結ぶ電車、バリハイ埠頭の再開発が挙げられておりますが、バリハイ埠頭に関しては、サンフランシスコのPier39・フィッシャーマンズワーフのようなイメージでの大型再開発を計画しているようです。

又、国際会議、展示会等の積極的な誘致に力を入れていきたいとの事です。

上記以外にも港湾整備、バイオ関連、ロボット、航空関連産業等をターゲットにした特別優遇策による東部産業地区への誘致、医療ハブとしての病院誘致、高速道路の拡張等がEEC構想には含まれていますが、このようなプロジェクトも直接的には無いにしても、今後のパタヤ地区の不動産市況に寄与するものと思います。

但し、このような政府主導のメガプロジェクトにしても、政権交代等の影響で変化する可能性もありますので、楽観は禁物です。タイでも2014年の軍事クーデター後、現在も軍事政権が継続しています。民政復活に向けての総選挙も数度に及び延期が繰り返され、現時点では2019年2月に総選挙が行われる見通しです。

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