増加する賃貸難民

本日のタイトルは変わった言い回しなので、しっくりとは理解し難いかも知れません。賃貸難民とは、賃貸物件が思うように見つからず賃借希望者が難民化する、では無く、賃貸投資物件として不動産を購入したもののテナントが付かず長年空室となってしまっているオーナーを意味しています。

某大手外資系不動産会社(CBRE)発表の統計によると、バンコク中心部の賃貸アパート(ワンオーナー物件)の平均空室率は8%前後と極めて高い稼働率で推移しています。賃貸アパート物件は2~3ベッドルームの家族世帯向けが中心となっており、一方コンドミニアム(分譲マンション)はそれとは対照的に70%以上が1ベッドルームとなっており、単身世帯向けのユニットが中心となっています。

又、賃貸アパート物件は、1ベッドルームで50㎡以上、2ベッドルームで100~150㎡、3ベッドルームで180㎡以上と余裕の広さが確保されています。方やコンドミニアムは1ベッドルームで30~60㎡、2ベッドルームで55~100㎡、3ベッドルームで90~150㎡ぐらいですが、新しい物件程小さくなる傾向にあります。最近のバンコク都心部の新規プロジェクトでは、小さい1ベッドルームで27~35㎡、大きい1ベッドルームで37~50㎡、小さい2ベッドルームで48~60㎡、大きい2ベッドルームで70~90㎡、といった設定が一般的な設定となっています。

賃貸アパート物件数はここ数年全く伸びが見られず、スクムビット地区では年に3、4件程度の極微増に留まっており、空室率は下降を続けています。

一方、コンドミニアムの着工数は、2014年5月22日の政変後数か月は伸び悩んだものの、2015年に入りすっかり息を吹き返しています。バンコク中心部の中でもスクムビットソイ1-63、2-421のエリアでは、40%以上の購入者が賃貸目的で購入している為、賃貸市場に投入されるコンドミニアム物件は右肩上がりに上昇を続けています。

こういった状況の中、コンドミニアムの空室率は上昇傾向となっており、バンコク中心部の空室率ははっきりした統計こそないものの、実感としては30~40%ぐらいが平均値ではないかと見ています。

つまり3つに1つは空いている、という事になります。

激化するテナント獲得競争の状況に関しては、過去ログ“賃貸勝ち組になる為に必要な事”でも書きましたので是非ご一読下さい。

コンドミニアム賃貸人気度に関しては、過去ログ“中古コンドミニアムバイヤーズガイド・トンロー編”、“中古コンドミニアムバイヤーズガイド・プロンポン編”が参考になるかと思いますが、状況は毎年変化しており、つい最近まで人気のあったと思われていたコンドに空室が目立ち始めたりするのは決して珍しくありません。

人気物件にテナント需要が過度に集中し、不人気物件は見向きもされない、といった状況も従来通りです。

こういった状況の中、スクムビットの日本人地区で良さそうなコンドをプリセールで購入したものの完成後全く借り手が見つからず、1年以上経っても空き部屋のままとなっている、といった冒頭で名付けた“賃貸難民”オーナーが増加中です。

スクムビット中心部のコンドミニアムは、既に平米単価20~25万バーツ(60~75万円)が中心値となっており、決して安くはありません。3~5千万円の物件を購入して利回りを見込んだものの1年にも渡って借り手が付かない、というのはまさに悪夢的な状況と言えます。

このような悪夢を回避する一つの方法論として、“賃貸勝ち組になる為に必要な事”では、内装・インテリアによる差別化をお勧めしましたが、圧倒的に供給過多の現況を見据えるとこれでは手段としては不十分と思えてなりません。

それでは、有効手段としては何が考えられるのでしょうか?

先ずは、賃貸物件が供給過多となっている状況下では、物件購入に踏み切る前に、賃貸客付けを依頼する不動産業者を選定する事が重要なのではないかと思います。

コンドミニアム物件に関しては、一握りの人気物件を除けば、賃貸業者が部屋の確保に困る事は先ずありません。そして、我々賃貸業者は会社単位、営業マン単位の二段構えで、「どのオーナーの部屋に客付けをするべきか。」といった一定の優先順位を持っています。

会社単位で言えば、ヨシダ不動産で物件を購入した、取引が多く信頼が置ける、等の理由で優先順位が設定され、営業マン単位で言えば、常日頃の取引でお世話になっている、家賃交渉の融通が利く、何らかの借りがあり埋め合せしなければならない‥等の理由で、会社とはまた別の方向性を帯びています。

賃貸客付けといった仕事の性質上、賃貸客の眼鏡に適う物件を見つけ成約に至る限りは、どのオーナーの物件を借りなければ駄目といった会社の強権を営業マンに対して発動する事は滅多にありません。賃貸物件というものは、借り手のニーズが無ければ成約に至る事は無いからです。と言えば小難しい言い回しになりますが、シンプルに言えば「住みたくない物件を借りる人はいない。」と言う事です。

唯一会社の方針を徹底するケースは、弊社で購入したコンドミニアムを客付けする場合に集約されます。弊社は、賃貸能力の高さをコンドミニアム販売展開の軸足としていますので、これを徹底しないと販売競争でのアドバンテージを握れないと確信しているからです。

勿論、投資家の皆様に購入物件を進める際にも、賃貸投資目的の場合は客付け責任を最後まで全うできると判断した物件をお勧めする事を主眼としています。

弊社に賃貸物件を持ち込まれる日本人投資家の皆様は、インターネットの広告等でプリセール物件を見つけ自己判断で購入されるケースが未だ多数を占めていますが、それが不人気物件の場合はお役に立てる事は先ずありません。

不人気物件、会社・営業マン個人共に賃貸物件として優先的に扱わない、といった2つの否定的要因が揃うと、社内システムの賃貸物件データベースに登録はされても、幸運に恵まれない限りはそのまま埋没していく運命を辿る事が一般的だからです。

弊社の賃貸事業の内容は、過去ログ“コンドミニアムバイヤーズガイドを書いて思う事”をご覧下さい。

賃貸物件の需給関係が崩れ供給過多となっているバンコクのコンドミニアム賃貸マーケットでは、「これなら行けるだろう。」とのにわか発想で物件購入に踏み切る事は、賃貸利回り投資においては非常に危険な行為です。

弊社で購入するお客様からは物件価格の3%を購入サポート料金として頂戴しておりますが、物件の転売、賃貸客付け、物件管理(別途料金にはなりますが)、相続(手続き自体は別途料金)他の法務関連サポート‥等のサービスが含まれております。

投資家の皆様が直接ディベロッパーから購入する理由は、弊社が扱っていないプロジェクトなので、3%の購入サポート料を払いたくないので、等が理由になっているものと推測します。

しかし、購入したコンドミニアムが完成後1年の空き家となってしまうと、その損失は現行のバンコク中心部の平均利回りに照らし合わせれば5.5%に相当します。

又、不動産を所有するという事は、入り口となる購入ステージも大切ですが、それ以上に賃貸管理(収益管理)、物件維持管理、そして出口となる売却も又同等に大切である事は自明であるかと思います。

より安く購入する事だけに全エネルギーを投入するイコール投資勝ち組、とは決してならないのです。一度賃貸難民に陥れば、投資プランが根底から崩れてしまう事は言うまでもないからです。

今回は弊社に利益誘導を行うような内容となりましたが、決して投資家となる読者の方には不利益にはならない方向性であると確信しております。
海外不動産投資のあり方を冷静に再度見つめ直してもいいのではないでしょうか?

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