タイのコンドミニアムの間取り

長く海外に住んでいると当初は気になっていた事が時間を経るにつけ慣れていき、全く気にならなくなるどころか、挙句の果てには「こっちの方がいいや。」となってしまう事も珍しくありません。
それはそれで新しい環境に順応したということなので、生活する上で抱いていた苦痛、嫌悪等といった否定的な感情が希薄になり確かにいいことなのですが、それは同時に現地人との同化が進んだ事を意味します。
そしてこれは海外の日本人社会、特に日本よりは後進国と目される国における日本人社会ではマイナスとして語られることが一般的です。当地でも、仕事が遅い、反応が鈍い、のんびりしている社内の日本人を「あいつはもうすっかりタイ人だからね。」といった感じで他の日本人が揶揄する状況を目の当たりにした人は少なくないと思います。
僕自身東南アジアを中心に数ヶ国に及ぶ勤務経験がありますが、やはりこういった場面には何度も遭遇しました。自身でも20代の頃はその若さが持つ傲慢さの中で、言葉にしないまでも同じ感情を持っていた事は正直あったと思います。
今現時点で実感としてあるのは、世界どこにいっても特有の文化、風土、風習があり、いいところも悪いところもある、といった当たり前の結論です。
タイでも同じです。生活していて腹立たしいことも実際多いのですが、落ち着いて我に返ると、この国の人の優しさや懐の深さに気が付きます。そして、「タイはやっぱりいいなー。」なんて思ったりします。
しかし、ビジネスの社会ではそれは大きな危険をはらんでいます。この不動産業を生業としている限り、タイに慣れた自分、即ちタイに来た当初持っていた違和感を忘れた自分のままでいると、初めてタイに来たお客様の感覚を斟酌することも共有する事もできません。
顧客の立ち位置、目線で考えるのはビジネスの基本である、というのは普遍的な事実かと思います。ですので、現地人化してしまい、それを顧みることができない人は、このビジネスで成功する事は多分ないでしょう。
当たり前の事と思いがちですが、バンコクの業界の中では現地人化し、そのままの自我をもって仕事をしている人は少なくありません。他人の振り見て我が振り直せ、との言葉にあるように常に自分を戒める必要があるものと考えています。
特に賃貸仲介においては、顧客が何を欲しているのか、そのニーズを的確に汲み取る能力は不可欠です。加えて知識、経験を持って該当物件を割り出し、そこから取捨選択して最的確物件を導き出すインテリジェンス、等がこの仕事には求められます。
現地人化、それを否定することはしませんが、こと仕事においてはそれを拭い去り、自分がタイに来たばかりの初心に立ち戻るプロフェッショナリズムが僕達の仕事には求められるのです。
あれ?不動産販売のブログの趣旨から思わず脱線してしまいました。
実は、今回からタイのコンドミニアムの間取りに関して掘り下げていきたい、と思っていました。
タイのコンドに住み、当社は戸惑いを感じた居住空間に思いを馳せて書き始めたら、思わずあらぬ方向に脱線してしまいました。
既に慣れたタイのコンド、これを当たり前のように日本の顧客に紹介する事の間違いを論じるに当たって、逸脱の一途を辿ってしまいました。ばかですね。もしかして皆様からは共感を得られるかもしれませんので削除せずに進めます。
時間を無駄にした感があった方にはお詫びします。
間取りの話。本題に入ります。
先ず、次の2つの間取図を見て下さい。
※日本代表-豊洲パークホームズ
park_homes
※タイ代表-NOBLE BE 33
noble_be_33
日本代表はパークホームズ`豊洲の3LDK、76.8㎡。三井不動産レジデンシャルの物件をスーモのHPから勝手に転載。厳密には違法行為。でもこれから褒めますので許してくださいね。宣伝にもなるし。
方やタイ代表はノーブルディベロップメント社のNOBLE BE 33、3ベッドルーム、76.82㎡。ほぼ完売したプリセール物件です。
細かい検証をする前に、その表記に大きな違いがある事に気付きます。
豊洲パークホームズ(以下より、“豊洲”)は、部屋毎に広さが記されていますが、NOBLE BE 33(以下より、“NOBLE”)はユニット全体の大きさ以外は何も表記がありません。
図を見れば大体わかるものの、広さ以前にNOBLEはLIVING、BEDROOM等の説明表記も一切ありません。
実は、ここにはもっと大切な事があります。
タイではユニットの床面積にバルコニー部分も含まれている点です。
従って、豊洲をタイ式表記にすると、76.8㎡+17.89㎡=94.69㎡、となります。
豊洲では間取図以外に施設・サービス、キッチン、立地・配置等の一覧表が添えられており、ここでは省いていますが、設備・構造についても細かく記述されています。間取りと直接関係無い部分もある事は確かですが、邪魔にはなりません。知りたいと思う事が如何なく表記されています。
これはスーモの行き届いた配慮による要素ではあるものの、日本のHPではどこを見ても懇切丁寧且つ正確無比なスペック詳細を目にします。
方やNOBLE。カタログやHPを見ると目を引くイメージ図や宣伝文句が列挙されていますが、スペック詳細を目にする事はありません。又、それらのイメージは、「看板に偽りあり。」に限りなく近いようなケースも多々見受けます。
法律による規制の違い、又それ以前に法治国家としての成熟度に違いがある事に起因しているところも多分にあるかと思います。
表記上の違いを一言で説明するとすれば、
豊洲は事実を詳細に渡り表記→正確な情報を届けることを目的
NOBLEは、事実表記は最低限、物件をグラマラスに見せる事に腐心→誤解を与えてでも販売に結びつく事を目的
といった感じでしょうか?
ちょっとNOBLEには辛らつな評価となりました。こういった宣伝広告手法はNOBLEだけではなく、タイのほぼ全てのディベロッパー共通と考えていいでしょう。
タイでは、あまりのせられず冷静に物件像を割り出していく必要がありそうです。
冒頭の理屈こねこねで長くなって、間取りの掘り下げまでは言及できていませんが、次回に続く、ということにします。お楽しみに!

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