値崩れは賃貸相場へも波及 (その2)

短期滞在の観光客市場が消失する中、大手サービスアパートチェーンが長期滞在の駐在員へと舵を切った事は前回説明した通りですが、そこには既に駐在員市場のみを専門に扱ってきた比較的中規模な物件も凌ぎを削っており、その取り込みは容易ではありません。

そこで、その取り込み戦略として賃料の大幅値下げは勿論の事、ありとあらゆる手段に訴える仁義なき戦い(やはり古いですね)をしかけるに至るわけです。

ヨシダ不動産での仕入れ価格表を見ると、サービスアパートの賃料は2019年頃に比べて25~30%ほど下がっている結果となっています。又、追加料金となる朝食やランドリー代も又大幅に値下げられていたり、電気代等の光熱費にもプロモーション価格が適用されていたりする物件も見受けます。

下の写真は大手サービスチェーンから送られてきたプロモーション案内ですが、タイトルはRELOCATION PROMOTION(引っ越しプロモーション)、他物件に居住している駐在員を弊社の物件に引っ越しさせて下さい、といった趣旨の内容となっています。飽くまで不動産業者対象の内容なので、物件の実名や詳細は避けますが、不動産業者に対する成約コミッションの増額が記されています。

誤解を避けないように言っておきますが、この会社はだれもが知るようなサービスアパートの世界的なチェーンで、入念な市場調査の下で行う価格体系の組み立て方や顧客へのサービス提供、旅行会社や不動産業者等の販売網構築もマリオットやヒルトンホテルといった老舗高級ホテルチェーンと比べても全く遜色がありません。つまりは、それほどの会社がこういったプロモーションを仕掛けるほど、現状のマーケットはひっ迫しており、背に腹はかえられない状況となっているのです。


※大手サービスアパートのプロモーション広告

この会社は他社と比較してもまだ仁義を大きく逸脱する事なく、目下の窮状に対して秩序立てて戦っていると言える方で、「もうこうなったら何でもやりまっせ。」といったサービスアパート会社は数多くあります。


※サービスアパートからのメール案内

上の画像はとあるサービスアパートから届いたメールでのプロモーション案内で、1年賃貸契約が成約すれば、最大4カ月分のコミッションを払います、と書かれていますが、その内訳として、不動産会社へ1カ月、不動産会社又は担当営業者に2ヵ月、テナントへの引っ越し代又は担当営業者に30,000バーツ差し上げます、といったかなりえぐい内容となっています。

小規模な不動産仲介会社になりますと、営業担当員の立場が非常に強かったりしますので、「そう書いてあるんだから、私はきっちり3ヵ月分もらいます。」等になるケースもあるかと思います。そうなると会社の方針などあったものではなく、営業担当者は9万バーツ(31.5万円)ももらえるんだったら、と言う事で顧客の要望を捻じ曲げてでも内覧に連れていきかねません。そしてそれは後々、テナントへの不利益、不動産業者のディスクレジットへとつながる大きなリスクをはらんでいます。

幸いヨシダ不動産はこの手の甘い誘惑にはスルーする社内システムと倫理が確立されているので、僕自身は頓着する事はありませんが、こういった手法を取り、平気で会社の代表メールアドレスに送り付ける業者というのはどういった精神性を持っているのか疑問に思ってしまいます。

次回は、サービスアパートの仁義なき戦いがコンドミニアム賃貸にどのように波及しているのかを説明したいと思います。

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