激減するパタヤのコンドミニアムプロジェクト (その2)

前回からの続きです。

Colliersによる新規発売エリア別コンドミニアム戸数の統計グラフも再度次に掲載します。


※パタヤ地区新規発売コンドミニアムユニット数の推移 出典:Colliers

Colliersのレポートによると、2020年上半期に発表された新規発売コンドミニアムの販売率は66%で、2019年下半期よりは改善されたがパタヤでは約20000ユニットが売れ残っている、との事です。

2020年上半期は480戸しか発売されていませんので、いくらコロナ禍と言えども10992戸も発売された2019年下期よりは販売率が上がっても何らおかしくありません。

それよりも着目すべき点は、20000ユニットも販売在庫が積み上がっている点、そしてそのほとんどの供給がジョムティン、ナジョンティエン地区に集中している点です。水色そして茶色の棒グラフバーが突出している点を見れば一目瞭然です。

参照するに便利かと思いますので、前回掲載したエリアマップを再度掲載します。


※パタヤエリア地図

このエリアで開発が進む一番の理由は、多くの土地が余っているので安価に確保できるからです。ビーチフロントの土地はさすがに限られていますが、ジョムティエンビーチロードと並行して内陸側に走るジョムティエンセカンドロードとスクムビットロードの間には空地だらけで、開発用地はいくらでも安価に確保が可能です。

ところで、パタヤとジョムティン地区のビーチフロントは、前回紹介した人気の高いウオンアマット地区とは大きく異なります。ウオンアマット地区のビーチフロントはオンザビーチになるのに対して、他エリアはビーチ沿いに幹線道路が走っていますので、あくまで道路を挟んでのビーチフロントになります。ナジョムティンはウオンアマット同様にオンザービーチになります。オンザビーチはコンドミニアムの敷地を一歩出るとそこは海となりますので、眺望こそ大差はありませんが、一度住めば似て非なる高い開放感を得られます。

2019年の新規発売物件は、息を吹き返すパタヤのコンド市場(その1)で紹介したプロジェクト“コパカーナビーチ”を除いて、そのほとんどがジョムティエンセカンドロード沿いの開発になります。価格が安く抑えられ、開発用地はいくらでも確保できますので、規模の大きい物件になる傾向にあります。

ジョムティエン地区は11月〜3月に長期滞在するロシア人や欧米人に従来から人気が高く、パタヤのような雑多な印象は薄く、ホワイトサンドの長い海岸線続くリゾートテイスト溢れる風景が広がります。その点において、中国人、他アジア地域の滞在者が生活利便性の高いセントラルパタヤ地区を好むのとは対照的です。

ここ数年は中国人が不動産投資の多数を占めましたので、パタヤ地区のコンドミニアムが選ばれやすく、ジョムティエン地区は売れ残り在庫が積み上がってしまったわけです。ここら辺の需要と供給のミスマッチをディベロッパーはわかっているはずですが、なぜジョムティエン地区の開発を増やしたのかが府に落ちません。

予想するに、従来からパタヤにおけるコンドミニアム開発はこのエリアの専業者が多く、 Tulip Group、Matrix、Heights Holdings等の欧米系人が経営する開発物件が大きなシェアを占めているのがその理由ではないかと思います。彼らの欧米人を中心としたマーケティングがこの不一致を生み出したのでは無いでしょうか。

一方、レイモンランド、サンシリ、SCアセット等のバンコクの上場ディベロッパーによる開発は、パタヤ地区、ウオンアマット地区がほとんどなので、用地を確保する実力の違いにも背景にはあるのかもしれませんが、こちらのマーケティングの方が市場の動きを的確に捉えているものと思います。

2016、17年は在庫一掃に苦労し脱却したかに思えたところコロナに見舞われ、今度は2018、19年に積み上がった在庫に取り組まなければなりません。一難さって又一難、まさに山あり谷ありの様子が伺えます。

パタヤにおいてもしばらくはバーゲンセールが続くものと思いますが、中国人市場の回復、そして高速鉄道への期待回復が起爆剤として、パタヤのコンド市場は時間をかけてボトムアウトしていくのでは無いかと予想します。

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