2019年のコンドミニアム市場は低迷か?(その2)

前回に続き、バンコクポストの記事に基づいたコンドミニアム市場についての説明となります。

3年以上前から香港や中国からの投資家が増え始めたことに目を付けたディベロッパーは、香港や中国の大都市等で販売を行うようになりました。

香港、北京、上海等の大都市のマンション価格は、既に東京の価格を大きく上回っています。

一般社団法人日本不動産研究所が行なった世界主要都市のハイエンドマンション価格相場調査によれば、東京港区元麻布にあるハイエンドマンションの分譲価格を100とした場合、
香港193.9
北京108.8
上海135.4
バンコク25.6
となっています。


※主要都市のマンション価格比較  出典:一般社団法人日本不動産研究所

上記のグラフでは各都市のどのマンションと比較したのかが分からないので、その妥当性は正直なところ何とも言えません。香港は東京の2倍、バンコクは東京の4分の1ですので、香港と比較するとバンコクは8分の1となります。香港に住む人にとっては既に庶民の手の届かない価格になりつつある自国の物件に比べて、バンコクのマンションはかなり安く感じられるのは明らかです。

そして年間ベースで1000万人以上の中国人ツーリストがタイを訪れる中、街のあちこちで目にするゴージャスなコンドミニアムがそんなに安いの?と驚きをもって捉えた人も少なく無いはずです。

この価格指数をベースに単純計算すると、香港で1億円するものがバンコクでは1,320万円で買えることになりますので、不動産投資を考えている人にとっては垂涎の的になっても何らおかしくありません。共産党の言うことを聞くことなく何不自由なく暮らせるタイは、ツーリストの目には非常に魅力的に映るでしょう。

かなり短絡的かも知れませんが、バンコクはそんな感じで不動産の投資先として幅広く中国人マーケットに受け入れられていったのだと推察します。

香港、中国での販売が増加すると共に、タイの大手ディベロッパーは現地の不動産会社とタッグを組み、バンコク中国同時発売、中国先行発売、と自然な流れで中国の市場にのめり込んで行く事になります。

ある大手ディベロッパーの営業担当者より、絶頂期の頃の香港の大手不動産会社は1〜2日で200ユニット以上さばいていた、と聞いた事があります。ホテルの大宴会場で分譲販売を行い、売り手はプロジェクターを使って直接関係ないスーパータワーやらサイアムパラゴンやらを巨大スクリーンに映し出し、さらに有る事無い事並べ立て、そのプロジェクトがどんなに素晴らしいか、なりふり構わず美辞麗句の速射砲を浴びせ続け洗脳してしまう、との事で、プロジェクト紹介が終わると購入希望者が殺到し、飛ぶように売れていったらしいです。すごいですね。

日本の海外不動産エキスポに足を運んだ際にも、実際僕自身そんな感じの業者さんを目にしましたので、もっと荒い中国マーケットでそのような事があったとしても、何ら不思議ではありません。

そしてそういった中国の有力不動産会社が販売力と発言力を強め影響力を増していくと、タイの大手ディベロッパーはその販売力に依存度を高め、耳を傾けざるを得ない抜き差しならぬ関係が構築されるに至りました。

中国の業者がより多くの販売リベートを要求するようになると、それを実現する為の販売価格の改訂や二重価格といったタブーとなる販売手法に手を染めていったのだろうと推測します。

バンコクポストの記事で登場するNexus Property Marketing Co., の社長は、いくつかの不動産会社は中国人投資家に対して、価格の20〜50%を上乗せして販売していたと明言しています。「もし購入した中国人購入者がその事実を知れば、登記移転時に残金を喜んで支払うとは思えない。」と同社長。喜んで云々ではなく、大騒ぎになるのではないかと思うのですが・・・。

多くの中国人投資家は、「値段が上がります。」と販売時の業者の言葉に踊らされて、キャピタルゲイン目的で購入しているケースが多いのですが、プリセール後の価格上昇が限定的な昨今、しかも上乗せ価格で購入していたとしたら、購入者の思惑が現実となる事はまずないでしょう。

最近、ヨシダ不動産においても、中国や台湾からのお客様からの購入依頼が目につくようになりましたが、もしかすると上記で綴ったような事例が背景にあるのかも知れません。

近年伸び続けた中国からの投資マネーは中国の景気低迷を背景に鈍化傾向に転じていますが、この伸び悩むマーケットにも危ない火種がくすぶっており、社会問題化する時が来るかも知れないと内心思っています。

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