底値買いのベストな方法 (その2)

海外不動産に詳しい人であれば、プリセールやプレビルドの仕組みは既に熟知しているのでは無いかと思いますが、日本の不動産オンリーの人が初めて聞くと「えっ、そんなの有りなの?」の若干驚きを伴う印象を持つのでは無いでしょうか?

簡単に言うと、開発会社(ディベロッパー)から購入した物件を完成・登記前に第三者に転売できる、という仕組みです。転売価格は自由に設定でき、売れると思えば1,000万円でディベロッパーと購入契約を結んだ物件を例えば1,200万円で第三者に転売が可能です。ディベロッパーにとっては、購入者が太郎さんから花子さんに変わるだけで、転売契約書を準備していとも簡単に転売成約となります。太郎さんは200万円の利鞘を得た事になる訳です。

タイにおいては、2000年に入ってからコンドミニアム価格は右肩上がりで上昇しましたので、このイージーな利鞘を稼ぐことを目的とした、最近よく言われるところの転売ヤーが20年近くに渡りプリセール会場に並んで購入し、不動産市場で大手を振って闊歩していたのです。

転売ヤーと言うとめちゃくちゃイメージが悪いですが、僕自身は合法的な市場参加者であると認識していますので、誤解なきように!ディベロッパーにしても転売ヤーの人達とはおんぶに抱っこで市場を形成してきた経緯があります。

実際、好況期には、多くのディベロッパーが全体の2〜3割のユニットを温存し、発売分が完売すると、「完売御礼」とばかりにブラフをかまし、転売ヤーが利鞘を乗せて転売し始めるとその転売価格に準じるように価格改定を行った後に温存在庫を改めて販売するような事を平気でやっていました。まさに嘘が平気で横行する、魑魅魍魎が跋扈する、といった世界だったのです。

中には登記時期を超えても大量の在庫を最後の最後まで温存し、大幅値下げ処分を余儀なくされたディベロッパーもいました。天罰が下った、という事ですね。阿漕な商売をすると必ずそこには落とし穴があるものです。

富裕層顧客に至っては、プリセール会場に足を運ぶことも無く、VVIPプリセールと呼ばれる内々のフライング販売で多数のユニットを買い占めていました。ヨシダ不動産がお付き合いしているタイ人レギュラー大家さんの中には、最上階の半分のユニットを買った等の人もいて、不動産活況の恩恵を燦々と享受していたのです。

このマネーゲームに参加した日本人投資家も少なくありませんでした。特にアベノミクス以降異次元緩和の時代に突入するとタイのみならずマレーシア、フィリピン、ベトナム、カンボジアといった東南アジア各国へ不動産投資マネーが流入。海外不動産を爆買いしていた中国からの投資に比べるとその額こそは見劣りはするものの、タイにおいては市場の一角を担っていたのです。

海外からの居住用不動産投資額の半分は中国が占めている事は過去ログでも説明してきましたが、習主席が「家は住むためのものだ。投機のための不動産購入をやってはならない」といくら訴えても、どこ吹く風?とばかりに、不動産好きの中国人による購入もコロナ発生まで加熱し続けたのです。


※中国人投資家が買いたい国、人気ランキングトップ5

開発サイドにおいても、日本資本が絡み始めます。2016年頃から三井、三菱等の日系ディベロッパーが現地大手ディベとの合弁プロジェクトという形で市場に参入。2018年に入るとその動きが加速し、現在に至るまで大手、準大手日系ディベが続々と参入してきたのです。日本政府主導では無いので意味こそは違うものの、かつての護送船団方式といった言葉が彷彿とされるような様相を呈していました。

活況期のコンドミニアム市場の空気を正確に伝えるのに腐心しすぎたかな?いつも通りの長い前置きとなってしまいました。

次回は市場活況期に即完売したような人気プロジェクトのコンドミニアムはどのように売買され、価格はどのように推移したのかについて説明します。

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