2022年コンドミニアム市場展望 (その3)

2021年第二四半期時点での都市部CBDの平均販売価格は240,609バーツ/㎡で前年同期比9.8%の減少、の結果が出ていますが、20%前後の減少となった都市隣接地域や郊外に比較して、底堅く推移している事が見て取れます。CBDにおいては、2018〜20年も期間新築コンドミニアムの完成ラッシュがありましたが、その後第三、第四四半期の新規販売はゼロ、完成引き渡し物件も片手でほぼ皆無と言っていい程に留まっています。

仁義なき在庫一掃セールも山を越えて一段落付き、大手ディベロッパーのプロジェクトは郊外の廉価プロジェクトや一軒家(現地でムーバーンと呼ばれる、セキュリティ付きゲート内にある住宅が主流、英語の統計でLow Riseとして登場する不動産)に開発の重心をシフト、CBDにおける物件開発の再開はしばらく見送りが続く見通しです。

余談になりますが、大手ディベロッパーにおいては、コロナ禍で大胆なリストラが行われており、中にはオフィスをしばらく閉鎖し、社員全員がリモートワークになっているところもあります。在庫一層の次は社員一層と言う事でしょうか?

こういった状況から、CBDにおいては1〜2年で供給過多から需給バランスの均衡が進み、価格上昇に転じるのでは無いかと推測しています。その頃にはバーツ安も今以上に進み、通貨高が見込まれる香港(香港ドルは米ドルと連動)を含む中国、既にかなりの通貨高となっている台湾、金融引き締めで通貨高に転じるシンガポール等近隣アジア諸国からの投資再開が予想されるからです。

一時はニューCBDと持て囃された地下鉄ラマ9世駅周辺のプロジェクトが、昨年続々と完成し登記を迎えましたが、まだまだ完成在庫が捌けていないようです。何しろ1箇所に集中する形で、アシュトン・アソーク・ラマ9、ライフ・アソーク・ラマ9、ライフ・アソーク・ラマ9・ハイプ他、大型プロジェクトばかりが完成し、多くのユニットが決済されずに差し戻しになった、つまり物件価格の20%相当(プロジェクトにより若干違います)を捨てて登記せずにディベロッパーに返却された、と聞いています。

決済されずに差し戻しとなったケースはCBDでもありましたが、ラマ9世エリアはその数が桁外れに違います。

市場活況期には売り出されるプロジェクトはまさに玉石混合、熱狂の宴の後冷静さを取り戻し、なぜあのようなプロジェクトに踊ってしまったのか、と悔やんだ人も多いのでは無いかと思います。

物件にもよりますが、比較的賃貸需要が多く、ヨシダ不動産も得意としているスクムビットの物件であれば登記して賃貸付けと言った善後策も取れるのですが、そうではない地域では潰しが効きません。

賃貸予算の低い中国人エクスパットや更にシビアなタイ人テナント等に家賃を合わせて行くのは容易な事ではありません。日本人オーナーにとっては暴風雨の中で船出する覚悟が必要です。日系不動産業者がまず扱う事はない地域ですので、現地の不動産業者や管理事務所を通じて、又は自らテナントを募集しなければならず、大きな労力が伴うことも忘れてはいけません。

オンヌット〜ベーリン等のスクムビット中心部に隣接するシティフリンジ地域においては、CBD以上に大きな平均販売価格の下落が見られますが、これには賃貸価格の地盤沈下もその一因となっています。

CBDの物件であれば、利回りの低下を我慢して値下げする事によりそれまでシティフリンジに居住していたテナントを呼び込むことも可能ですが、それをやられるとシティフリンジの物件オーナーにとっては大きな打撃となります。それ以上値引きしようにもそのような予算帯のエクスパットは少なくなるので、バーゲンハンターのタイ人テナントにターゲットシフトする必要があるからです。

そうなると家賃集金から頭痛の種になります。踏み倒しなど珍しくない世界となるので、こちらは無法者の世界に首を突っ込むと言ったら大袈裟かも知れませんが、日本人の常識では考えられない事に折々遭遇することになるでしょう。

不動産大家になって労働せずに収入が得られる世界、そんな夢は砕け散るどころか悪夢のような経験をする可能性すらあるのです。

話が脱線しましたが、僕の見方では、都市隣接地域においては在庫一掃により長くの時間がかかるものの、CBD同様に新規プロジェクトは激減していますので、遅ればせながらCBDが辿るであろう轍を踏襲していくものと思っています。

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