EIA 厳格化、コンドミニアム建築規制は強化の方向へ (その3)
毎度の事なのですが、前回のブログから1ヶ月程経ってしまいました。このテーマに関連する興味深いプロジェクトがあるので紹介する事にします。
125 Sathorn(125サトン)がプロジェクト名で、名前に冠している通りバンコクCBDの一角を成すサトン通りで建築中のコンドミニアムなのですが、現地では何かと物議を醸しています。
と言うのも、従来からあるThe Met(ザ メット)の真前に着工が始まったからです。ザ メットは、66階建て超高層であるばかりでなく、ユニットに直行するプライベートリフト付きで、2、3ベッドルームの間取りも素晴らしく、メイド用のキッチンが付く豪華仕様のラグジュアリーコンドミニアムです。
これがプロンポン、トンロー辺りにあれば、押しも押されぬ人気物件になっただろうに、とこの建物を見るにつけ思った次第です。僕自身、この物件だったら是非住みたいぐらいです。市場価格は平米16万バーツぐらいで物件グレードに対してかなり割安となっている理由はロケーションになります。
サトン通りは橋に南はタクシン橋からトーンブリ地区へ、北はワイヤレス通りからプルンチット地区へ繋がるバンコクの大動脈なので、陸路で行くにはどこも便利なのですが、それ故に常時ひどく渋滞しています。(現在はコロナで空いていますが・・・)加えて、最寄り駅となるBTSチョンノンシー駅又はサラデーン駅、MRTルンピニ駅は徒歩圏内とは言えるほど 近くなく、買い物をするにもコンビニぐらいしか無い関係で正に陸の孤島、生活するには決して便利ではありません。
周辺にはAクラスのオフィスビルが立ち並ぶビジネス街一等地である事は間違い無いのですが、大量輸送機関の路線から外れてしまっている点は致命的です。現在開発中のワンバンコク等が完成すれば、多くのオフィス需要がそちらに流れるのでは無いかと思われます。
参照過去ログ;ラマ4世通りの台頭(その3)
話が脇道に逸れてしまいましたが、125サトンに話を戻します。
ザ メットはサトン通りに面している敷地幅は決して大きくなく、狭い道路を造成して奥に広がる大きな敷地に建てられた、日本で言われる旗竿地の形状となっています。
125サトンの建築用地は、その竿(引き込み道路)の脇の土地、つまりザ メットとサトン通りの間となっているわけです。
2つの建物にはさほど距離は無いので、サトン通りに面したユニットの多くはこれまでの眺望が遮られてしまいます。道幅の広いサトン通りを挟んで多数の高層ビルのスカイラインを見渡し、日が暮れれば素晴らしい夜景が広がる眺望は、タワーマンションならではの醍醐味なのですが、それが消えてしまうのはユニット所有者にとって大きな打撃であることは間違いありません。
2年ほど前からザ メットの物件が格安価格で目につき始めましたが、それにはこのような背景があったわけです。ザ メットは66階、125サトンは36階2棟になりますので、中低層階の所有者は大きなユニット価値を大きく毀損する事になります。
ここでEIAの話に立ち戻りますが、建築許可の厳格化は既存の所有者を保護すると同時に新規の建築潜在力を抑制する諸刃の剣である事は明らかです。東南アジアにおいては、シンガポールを例外として、事業者の力が強く、それに政治や官僚が支配される構図が一般的だったので、ディベロッパーはやりたい放題に近い何でもあり、と言うのが衆目の一致した理解でした。
今回のEIAの厳格化は果たしてその流れに一石を投じる事になるのでしょうか?
因みに125サトンは現地のディベロッパーと関電開発の合弁事業となっています。関電開発さんがあまり宣伝していないように見受けられるのは、現地で高まっている批判を気にしているからでしょうか?