EIA 厳格化、コンドミニアム建築規制は強化の方向へ  (その2)

今回のテーマとなるEIA厳格化は、担当部署である資源環境政策・計画室から提言されたもので、日当たりと風通しに関する規定をEIA審査基準に加えよう、といった内容になっています。

日本でもマンションを開発する際に、日照権の問題が良く取り沙汰されますが、タイにおいてもやっとその基準策定に着手し始めるようです。但し、提言が出たばかりなので、法制化されるまでには紆余曲折が予想され、その実現も保証の限りではありませんし、実現するにしてもまだしばらくはかかるのでは無いかと思います。

日当たり、風通しの新規基準項目の以前に、EIAはどのような審査基準を設けているのでしょうか?詳細に関しては膨大な情報量となるので、ここではガイドラインのみの紹介にとどめておきたいと思います。Knight Frankが簡潔にまとめたものをHPに掲載していましたので、下の表を参考にして下さい。

※EIA審査のガイドライン 出典:Knight Frank

僕の拙い和訳で申し訳ないのですが、大体のところはわかりますよね?「まあ大体はこんなところだろう。」との納得感を伴う内容かと思います。

バンコク内でのコンドミニアム開発を見ると、本当にこの基準で審査されたの?と疑ってしまうような建物も目にしたりするのですが、EIAの審査ガイドラインも時間と共に変更が加えられてきましたので、パッと見でおかしい、違反しているのではないか?と断じるのは困難です。

例を挙げると、狭いソイ(=通り)でも30階クラスのタワーコンドミニアムを目にしますが、概して1990年代までに建築されたものばかりです。詳細はわかりませんが、その頃までは高さ制限の審査基準が甘かった、もしくはなかった事が推測されます。現在は、面している道幅が10メートル以上ない場合、コンドミニアムの高さは23メートルまで、の明確な基準が設けられており、2000年以降に建築された建物はその基準に沿っている為7階建てが主流となっています。

今回の政府担当部署の提言内容として、プロジェクトオーナーは、バーチャル3Dモデルのデザイン技術を用いて、建築予定の建物が日中に落とす影、風通しの変化のシミュレーションを1年分提出しなければならない、といった内容です。

建物の影のシミュレーションは大体イメージできますし、赤道に近く緯度の低いタイでは、日の出、日の入時は違うものの日中の影はさほど伸びないでしょうし、季節を通じて大きく変化しないかとは思いますが、近隣に高層ビルができる際にはやはり大いに気になります。

風通し、これはイメージとしては難解です。何もない吹きさらしの場所であれば問題はないのですが、街中ともなると既存の構造物が風の流れを変えていますので、気象庁の風向き統計などでは局地的な風向きを想定するのは厄介ですし、それを1年間通じてとなると現在のテクノロジーで何とかなるのでしょうか?

ざっくり言うと、タイの場合、2〜10月は南からの風、11〜1月(乾期)は北からの風が吹きます。気候変動で若干の影響は出ていますが、大体はその理解でいいかと思います。ですので、集合住宅等な少なかった1990年代以前のアパートやコンドミニアムの多くが、北と南の両方に開口部が設けられ、気候風土に適した今で言えば贅沢な設計が施されていました。その頃のユニットは、200平米超の大きなものが一般的です。(天井が低いのが気になりますが・・・。)

その提言が発表されるや否やThai Condominium Association、Housing Business Association、Thai Real Estate Associationといった業界団体は反対の声をあげました。EIA認可に更なるコストと時間がかかる、コンドミニアムの建築可能な用地が減る、現在既に取得したコンドミニアム建設予定の用地はどうなるのか? そして結局はコスト上昇につながり消費者への販売価格が上がる、LTV規制(ホームローンの厳格化)やコロナで不動産市場が冷えているところでの導入は妥当ではない等々が反対理由の主なものです。この反応は、当たり前で誰にも想像できそうな事です。

新たな日照権、風通し権(とでも言いましょうか?)は、既存のコンドミアムオーナーにとっては、歓迎すべき事かと思います。自分が所有しているコンドミニアムの空地を見て、「ここに似たようなビルができたら眺望がなくなるどころか、自分の部屋が丸見えになっちゃうぞ。買う際に不動産屋はここには建ちませんので大丈夫といっていたがあてになるもんか。」等の心配を抱えている人は少なくないかと思います。

購入したコンドミニアムが完成する前にすぐ隣に新しい建設プロジェクトが発表されるといった事態は珍しくない話で、それがしかも同じディベロッパーのコンドミニアムだったりするので驚かされます。

実際そのような例は、バンコクCBD においては、その枚挙にいとまがありません。

 

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