タイの在留邦人数は2020年も引き続き増加

日本外務省が6月3日に発表した海外在留邦人数調査統計によると、2020年10月1
日時点でのタイの在留邦人数は8万1,187人。前年から2.6%の増加となっていました。

下表はトップ25ヶ国(地域)における直近5年間の推移を抜粋したものです。


※在留邦人数トップ25ヶ国の推移

2020年はコロナの影響で海外在留者数は当然減少するものと見込んでいましたが、タイ、マレーシア、ベトナムの3ヶ国に関しては、予想を覆す結果となっています。中でもマレーシアは、16%の大幅増加を記録しており、僕にはその理由が特に見当たらないのですが、誰か知っている人がいれば是非教えて下さい。

タイ、ベトナムは、コロナ発生初期段階において、日本とは比較にならない程の厳しい移動制限を実行しコロナ拡大を防いできた経緯がありますので、どうやって増えたんだろ?と首を傾げてしまいます。

尚、外務省の補足説明にもありますが、トップ10ヶ国で全海外邦人数の75.1%を占めるとの事です。
都市別在留邦人数の補足説明もありましたので、以下に抜粋します。

(外務省の発表抜粋)
都市別では、「ロサンゼルス都市圏」に在留邦人全体の約5.0%(6万7,501人)、「バンコク」に約4.3%(5万8,783人)、「ニューヨーク都市圏」に約2.9%(3万9,850人),「上海」に約2.9%(3万9,801人)、「シンガポール」に約2.7%(3万6,585人)がそれぞれ在留していて、5都市(圏)で在留邦人の約17.9%を占めています。
6位以降は、「大ロンドン市」約2.4%(3万2,257人)、「シドニー都市圏」約2.3%(3万1,405人)、「バンクーバー都市圏」約2.0%(2万6,661人)、「香港」約1.8%(2万3,791人)、「ホノルル」約1.7%(2万3,735人)、の順となっています。これら10都市(圏)で全体の約28.0%を占めています。
(終了)

アメリカやイギリスは婚姻その他による永住者数がアジア各国に比べて多く、アジアでは業務目的の在留者が中核を占めているのとは大きな違いかと思います。但し、タイ、フィリピン、マレーシアに関しては、リタイヤ組等も多く住んでいます。アジアの中でもシンガポールになると、のんびり暮らすリタイヤ組は極端に少なく、業務駐在のみならず節税や投資目的で在住する日本人富裕層が多く住んでいたりします。

一方、オーストラリア、カナダでは、働いて長期滞在できるワーキングホリデイといった仕組みがあり、若い日本人が多数居住しています。僕自身も20代の時にシドニーで5年ほど仕事の為に居住していたことがあります。その頃は、地元の日系企業や日本飲食店等では欠かせない働き手としてなくてはならない存在でした。その状況は今も変わってないかと思います。

日本人在留者の不動産賃貸仲介を生業としているヨシダ不動産にとって、在留邦人数はビジネスターゲットに直結するデータですので、大変気になるところであります。

話をタイに戻します。コロナ禍においても在留邦人が増えているとの結果にはなっていますが、ヨシダ不動産の新規賃貸仲介数は30%落ち込みました。2020年4〜7月は非常事態宣言の下、海外からタイへの飛行機は全面欠航の状態でしたから、その頃のタイへの日本人入国者数はゼロ状態だったはずです。

在留邦人数は、3ヶ月以上滞在する際に大使館に届出が義務付けられている、在留届をベースに算出しています。業務目的で居住している駐在員等はその届出をしっかり行いますので、正確な数値が反映されているはずですが、リタイヤ組やタイ好きの長期滞在者は、いちいちそのような届出手続きをせずに帰国しているケースも多いのでは無いかと推測します。

又、昨今の統計では、2017年にピークを打った製造業の進出は減少に転じているものの、飲食他のサービス業は右肩上がりで増えています。サービス業での進出は、中小企業が中核を占めていますが、もしかしたら2020年3月までのコロナ前と7月以降の飛行機臨時便の運行開始後に大きな流入があったのかも知れません。

製造業関連の企業、又は金融や商社等の大企業に賃貸シェアを持つヨシダ不動産においては、その層の顧客を取り込めていないのは認めざるを得ない事実ですが、他の日系不動産業者はヨシダ不動産以上に業績を落としているようですので、新たな流入層は日系業者のサービスを利用していない事が伺えます。
会社から家賃手当が支給される為、潤沢な賃貸予算を有する駐在員層が賃貸仲介ビジネスのボリュームゾーンを形成していた市場環境が変化し、予算が低く賃貸期間も短い需要が増加している中、これまでの硬直的な業務手法では対応し切れなくなっているのが実情なのでしょう。

以前のブログでも触れましたが、タイ人マーケットの取り込みもコロナ不況を乗り切る上では必要な手段である事は間違っていないと思いますが、それ以前にこれまで主要ビジネスとして扱っていた日本人への賃貸仲介のあり方が問われており、その取り組み無くしては、ポストコロナの新たな時代へは決して順風満帆の船出とはならないものと思っています。

参照過去ログ:値崩れは賃貸相場へも波及 (その4)

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