値崩れは賃貸相場へも波及 (その4)

バンコクの賃貸相場のブログを書いている際に、関連するニュースが目に留まったので、こちらにも転載しておきます。


※駐在員向けアパートの平均賃料バンコクは49位

世界主要都市の外国人駐在員向けの一般的なアパート(3寝室)の平均賃料調査で、バンコクは平均12%下落し、19ランク下げて49位になった、と報じている。非常に分かり易い内容で頭には入り易いが、どのような物件が対象なのか等の算出方法が分からないのが難点です。最近のニュース記事は、どれを見てもそのような具合なので特にどうこう言うわけではありません。3寝室の物件だけ抽出しているのは、駐在員の家族向けのみ論じているのかと思います。単身赴任が多い昨今その考え方に馴染めないところもありますが、非常に大雑把ではあるものの必ずしも実情が反映されていない、という訳でもありませんので、これはこれで良しとしましょう。

コンドミニアムの家賃相場を考察するに当たって、6物件を例に挙げました。次の写真を参照願います。


※バンコクコンドミニアムの賃貸広告

これだけ見ても、バンコクの不動産によほど詳しい人ではない限り、「これ何なの?」という世界かと思いますので、以下に解説を加えて行きたいと思います。

①アシュトンアソーク(Ashton Asoke)

2017年に完成したBTSアソーク駅、MRTスクムビット駅に隣接する50階建て超高層タワーになりますが、ヨシダ不動産でも販売仲介を行いました。ディベロッパーはアナンダですが、三井不動産との合弁プロジェクトになります。抜群の立地条件の物件として、プリセールでは瞬時に完売したにも関わらず、転売目的での購入者が完成登記前にこぞって薄利で売り出していた物件をヨシダ不動産のお客様に仲介しました。

この物件の特徴として、全783ユニット中の9割以上が30〜36平米の1ベッドルームユニット、残りが2ベッドルームといった極端なユニット構成比が挙げられます。ですので、賃貸競争には激戦が強いられる事が明確にイメージできていましたし、それ自体が有利な条件で転売物件を拾える理由となっていた事は確かです。

参照過去ログ:在庫一掃セールで気になるプロジェクト (その2)

新築後の滑り出しとして、ヨシダ不動産の賃貸実績を見てもまずまずの結果で、賃貸相場として予想された3.5〜4万バーツ程で成約していたのですが、家賃相場は年を追う毎にジリジリと下げ始めます。これは当初懸念された1ベッドルームの膨大な供給数そのものがやはり主要因で、テナントが付かない事に痺れを切らしたオーナーが値下げ競争を仕掛けて来た事に端を発しています。

築後2年が経過すると、家賃相場は3〜3.5万バーツに下落し、そこにコロナが直撃。新規駐在員の2人が激減する中、ヨシダ不動産のお客様の部屋の中にも長く空室が続くユニットが出て来ました。

上記写真の広告は2.2万バーツになっていますが、これは極端に安売りされている一例ではなく、現状の市場価格の代表例です。ヨシダ不動産においても、コロナ禍が予想以上に長引く中、日本人駐在員では手当てできないと認識し、タイ人テナントにターゲットの矛先を向けました。手札となる駐在員顧客が消失する中、他のテナント層市場で活路を見出す為には、その市場に合致した戦略を立てない限り成功には覚束ません。

購入して頂いたオーナー様に説明して、家賃の大幅減額をお願いし、2〜2.5万バーツ程でタイ人入居者との成約を重ねています。中には、「そんな安いんだったら貸さなくてもいいや。」という方もいますが、考え方は個々人で違いますので、我々がとやかくいう事ではありません。

コロナ感染症といった不可避の外的要因に打撃を受けるにしても、その現状でのベストプランを提示し続ける事が我々業者の責務ですので、受け入れ難い事実ではありますが、お客様と情報を共有しながら乗り越えるしかないと思っています。

②パークオリジンプロンポン
プロジェクト完成当初は、パーク24の名称でしたが、オリジングループが買収し現在の名前に至っています。こちらは、スクムビット22と24を跨ぐ広大な敷地内に、28〜51階のタワーが4つ(うち一つはサービスアパート)もある巨大プロジェクトになります。2ベッドユニットも多いのでアシュトンアソーク程の極端なユニット構成比とはなりませんが、2,000ユニット以上の供給数がやはり賃貸激戦を招く結果となっています。

広告は55平米程の2ベッドルームのものですが、2018年の完成当初の家賃相場は、5〜5.5万バーツでした。コロナ禍価格、3万バーツ。駅近ではありませんが、住環境が抜群に整っているスクムビットソイ24の築浅2ベッドルームがこの価格になるとは、誰もが予想できなかったでしょう。

③アイビートンロー

こちらは既に築10年以上の物件ですが、日本人駐在員には一番人気となるトンローの立地。BTS駅からは離れますが、トンロー地区は駅周辺以上にソイ55(ソイトンロー)の真ん中辺りに賃貸人気が高い傾向にあります。アイビートンローも立地の良さとグレード感の高さ、そして間取りの良さから43平米の1ベッドルーム、85平米の2ベッドルームには人気があり、1ベッドルームの新築当初家賃は3.5〜4万バーツ、コロナ前は3〜3.5万バーツの家賃相場で推移していました。2.6万バーツ程で下げが推し止まっているのは、床面積が新築コンドに比べてやや広めである点、そしてやはりトンローの立地が功を奏していると見て間違い無いでしょう。
次回に続きます。

 

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