出回り始めた投げ売り物件(その6) 登記前投げ売り物件諸々(1)

コロナによるタイ入国制限開始後多くのコンドミニアムプロジェクトが完成しましたが、海外にいる購入者は入国できない為、ディベロッパーも登記作業を進めることができない状況となっています。

物件完成→購入者によるインスペクション(不具合チェック)→ディベロッパーによる不具合修正→購入者による最終決済→物件登記、というのが大まかな流れとなりますが、その間にも多数の転売物件が最終決戦とばかりに市場に放出されてきます。

不動産活況時の2018年頃までには、プリセールで完売した人気プロジェクトはたっぷり利鞘が乗った上で転売されるのが主流でしたが、市場低迷にコロナが追い討ちをかけている現状では、人気プロジェクトですら損切り価格で取引されるのが一般的になっています。

今回は、そのような物件を紹介してバンコク不動産市場の現状を読者の皆様により理解を深めてもらう、のが主眼となります。

Life One Wireless ライフ・ワン・ワイヤレス

プリセール時、不動産市場はまだ好調のように見えたので(実際は乱調が水面下で始まっていたのですが)、瞬く間に完売した事はまだ記憶に新しいのではないかと思います。業界初の試みとなったオンライン・ブッキングも大きな話題を呼びました。既に昨年の時点で物件は完成し登記が始まったのですが、まだ登記終了していない物件が多数あるようです。

タイのプリセール物件を購入、登記した人の中には、半ばだらし無く間延びしながら進む登記プロセスを経験しているかも知れませんが、ディベロッパーによりバラツキこそあるものの、最終決済がされないまま完成から登記まで長期に及び放置されているケースは決して少なくありません。1年以上に及ぶケースもあります。

できるだけ早めに決済させて登記させたいディベロッパー、転売したいのでできるだけ引き伸ばしたい購入者の力関係、思惑、せめぎ合いのドラマがそこにはあります。力関係というのは、過去複数〜多数の購入者、社会的に影響力のある人等々、ディベロッパーがVVIPと位置付ける顧客がいて、ディロッパーもその要求をむげに扱えない状況がある事を意味しています。

発展途上〜中進国の位置付けとなるタイでは、ルールで割り切れない現実が巷に溢れており、現地生活が長期に及ぶとそのようなケースを目にする事も多く、中には理不尽と思えるような事例も枚挙に遑(いとま)がありません。これを言い出すと切りがないのでこれ以上は言及しませんが、そのような力が外国人に有利に作用する事はまずありませんので、そこだけはインプットしておいて下さい。

もっとも僕の経験ではタイはまだマシな方で、他のインドシナ諸国、インドネシア、フィリピン等は、その酷さに拍車がかかります。



※ライフ・ワン・ワイヤレスの損切り転売物件広告

上記の広告では全部で8ユニットが売り出されていますが、32〜41階の超高層ユニットばかり。中には購入時には確保がさぞ難しかったと推測される、2ベッド角部屋等もあり、このプロジェクトの総崩れぶりが見て取れます。

25〜60万バーツの損切りとなっていることがわかりますが、バンコクCBDの人気プロジェクトですらこの体たらくですから、郊外の物件はもっと悲惨な事になっているのではないかと思います。バーゲンハンター的な投資家にしてみれば、それは又と無いチャンスを意味するのですが、郊外の物件を購入して、利回りとキャピタルゲインを得るのは簡単ではありません。これに関しては、これまでも口酸っぱく説明してきましたので、繰り返す事はしません。

プルンチット駅からは600メートル程あるので、賃貸人確保は楽ではありません。スクムビットに比べて日本人世帯の需要も強くありませんので、登記して賃貸投資に回しても大きな苦戦を強いられるのは明らかです。

バンコクでも有数のアドレスとなるワイヤレス通りに面した物件ですが、プルンチット駅から離れてペッブリー通り寄りになる一角は、プルンチット交差点付近や、そこからルンピニ公園角までの多数の大使館やオールシーズンズプレイスが連なる華やかなエリアとは全く次元が違いますので、その点は十分注意が必要です。一度ペッブリー通りに足を踏み入れて街並みを見合わせば、一眼で理解できるかと思います。

Life Ladprao ライフ・ラッパオ

MRTとBTSの2線利用が可能な駅近、大型ショッピングセンター隣接、タイ人には人気エリアとの条件が揃い、こちらも非常に人気の高かったプロジェクトです。

日本でも宣伝され多くの日本人がプリセール購入したと聞いていますが、僕はその頃から、「日本人が買ってどうすんの?」と不思議に思っていました。日本人はほぼ住まないエリアなので、登記前転売のキャピタルゲイン狙い、タイ人対象の賃貸投資しか考えられませんが、後者を狙えば自殺行為、前者はプロジェクトが発売になった時期は既に市場に陰りが見え始めていたので、「大丈夫なの?」との印象が拭えませんでした。

蓋を開けてみれば、プロジェクトでも最もプレミアム性の高い、45階トップフロアの2ベッド角部屋75平米が1.2ミリオンバーツの損切り価格(11,495,000→10,295,000バーツ)で売りに出されています。一定の期間を置いて何度も同広告を目にしていますので、売却に窮している様子が伺えます。


※ライフ・ラッパオ 45階2ベッド2バス75平米、損切り物件広告

プレミアム住戸がこうなのですから、他の一般的なユニットの転売状況は推して知るべし。さぞや苦戦している事でしょう。このプロジェクトの極端な暗転は、当然コロナ禍が背景にあります。但し、投資の中でも、特に多岐にわたる知識と情報力を要求される海外不動産投資をする際には、目論見が外れた際の耐性も視野に入れておくべきで、失礼ながらこのプロジェクトに投資した日本人の方には、その認識が欠けていたのでは無いかと僕は思っています。

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