新築賃貸、スタートダッシュで一儲け

昨年暮れに完成したばかりのラグジュアリーコンドミニアムLAVIQ Sukhumvit 57(ラヴィク・スクムビット57)。トンロー駅前、マリオット・ホテル&サービスレジデンスの隣と申し分ない立地です。


※ラヴィク・スクムビット57

2017年にプリセール開始となったと記憶していますが、当時バンコクのコンドミニアム販売は好調の真只中、トンロー駅前ラグジュアリープロジェクトが23万バーツ〜と思い切った価格設定は多くの話題を集めていました。因みに当時のトンローのラグジュアリーコンドミニアムプロジェクトは平米27〜35万バーツが一般的な値付けでしたので、市場が冷え込み新規プロジェクトの販売価格が抑えられている現在はそう思わないかも知れませんが、プリセール開始時にはそれなりにインパクト&訴求力がありました。

ラヴィクを手がけるディベロッパーは、Real Asset(リアル・アセット社)とあまり聞かない会社の為、共有スペースのインテリアはあのFENDIが手がけるといった大盤振る舞いを大々的に宣伝しながらも、他有名ディベロッパーのような勢いのある売れ行きは見られませんでした。

ただリアル・アセット社はその後もトンロー地区にAESTIQ Thonglor(エスティク・トンロー)というラヴィクの更に上をいくクラスのプロジェクトを手掛けています。

昨年完成したばかりなので、内装が終わり賃貸に出回っているユニットは少数に留まり、家賃は1ベッドルームで5.5〜6万バーツと日本人駐在員の予算には届かない設定となっています。

「駅近、外観のかっこよさ、部屋の間取り、グレードの条件が揃っているので仲介したいのはやまやまだけど、予算オーバーなんだよなー。」と賃貸責任者はぼやきが聞こえてきます。

バスタブ併設のシャワールーム、カウンターキッチンが広い為ダイニングテーブルは置けないものの十分な居住スペースが確保されたリビングスペースを備える間取りのいい44平米のユニット、天井高は3メートルに及びます。更にガラスを多用したカッコよく劣化が目立たない外観、グレード&充実度の高い共益施設、トンロー駅近等、単身者に選ばれ易い条件が揃っています。


※ラヴィク・スクムビット57、 1ベッドルームイメージ

以前、バンコク駐在員世帯の賃貸予算について でも書きましたが、会社より支給される住居手当は5万バーツ前後ですので、メイドサービス等に5千バーツ程を充当させる関係上、4.5万バーツ前後の賃料を予算とするのが一般的です。

となると、悔しいながらもほとんどの日本人には高値の花となるのですが、分譲価格が平米23万バーツ〜です。諸税、管理費(タイでは大家さんが負担)、内装・家具コスト等を入れても、5%前後は確保できるので、家賃5万バーツでも悪くないはずなのですが・・・。

新築分譲価格の上昇が続くと同時に供給過多が進むバンコク不動産市場においては、平均利回りが5%を割り込むケースが常態化するようになってきている中、ラヴィクでは何故このような強気の家賃設定になっているのか?

バンコクの賃貸投資経験者の目にも不思議な状況のように映るはずです。

勿論、ラヴィクを買ったのは欲かきばかりか?等ということはありません。

実はこの手の状況は、完成したばかりのコンドミニアムでは一般的にある現象なのです。

どういうことなのでしょうか?

コンドミニアムが完成すると下層階から順次引き渡しが実施されます。そして引き渡しを受けたオーナーはいち早く内装工事・家具付を完了して賃貸に出します。

新築コンドミニアム、特にタワータグジュアリー物件は目を惹き、新規駐在の人達、又それ以上にバンコク在住者、特に引越しを考えている人には大きな興味の対象になります。

引越しを考えている人の動機は、駅近物件に引っ越したい、もうちょっと新しい部屋に移りたい、バスタブが欲しい、大きなプールが欲しい等々、十人十色なのですが、幾つかの条件がヒットすることがわかると、「是非内見したい。」の衝動が沸き起こり、内見で「これはいい。」→引越し、という運びになります。

但し、そのような際にはまだ引き渡し&内装作業を完了していない部屋も多く、賃貸可能なユニットは少ない為、競争がない状態で比較的高値家賃で成約するケースは少なくありません。

その後引き渡しが進み賃貸ユニットが増えてくると物件内家賃競争が勃発し、家賃の低下が始まり時間の経過と共に市場価格が形成されていくのです。

上記の理由から、完成直後に低層階のユニットの成約賃料が、完成6ヶ月後に成約した高層階よりも家賃を大きく上回る、といった逆転現象が発生します。

この状況をよく理解している一部のタイ人オーナーはいち早く賃貸に出し、低層階ユニットのアドバンテージを享受します。低層階ユニットは分譲価格も安いですから、一挙両得なのは確かなのですが、これは最初の3年ぐらいの短期間だけ作用するに過ぎず、後々は家賃価格、売却出口共に高層階の方が有利になる点は世界共通です。

こういった状況は賃貸業を長くやっていると毎度の事として見えるようになり、あたかもフライングするかのような猛然とスタートダッシュを切るタイ人オーナーを見るにつけ、「うん、あれね。」と慣れっこになっていくものです。その直向きさには感心の念すら覚えます。

アシュトン・アソークでもその現象は起きました。弊社の賃貸実績を見ると、完成直後は1○階のユニットが4.8万バーツで成約、その後は高層階が3.8〜4.5万バーツで成約している記録が残っています。

反面、内装未完了のユニットが多い状態で入居をするテナントにとっては、内装工事の騒音に悩まされる、多くの不具合が室内で発生、共益施設の準備が整っていない、管理事務所も物件を習熟している過程なので発生した問題の対応に手間取る等々の苦難に遭遇する事になりますので、実際いい事はあまりありません。

とは言え、ゴージャスな住まいを見るとどうにも衝動を抑えるのが難しいようなのです。

わかりますけどね、その気持ち。

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