2019年を振り返って

2017年の暮れぐらいから、プリセール時には人気プロジェクトとしてよく売れた物件が登記前を迎え、さほどプリセール時と変わらない手頃な価格で販売されるというかつては見られなかった現象を目の当たりにするようになりました。

参照過去ログ:価格のねじれ現象(その4)根底にあるのは不動産市場の変化 2018年6月27日

それまでになかった市場の乱調を調べるにつけ、バンコクコンドミニアム市場の潮目の変化を認知し当ブログを通じて警鐘を鳴らしてきましたが、実際まだその頃と言えば、ほとんどの人の目に映った市場の様相は冷めるどころか過熱を続ける大手ディベロッパーの販売攻勢でした。事実2018年後半のコンドミニアム発売数は過去最高を記録するに至ったのです。多数の日系大手ディベロッパーの合弁事業の大半はこの頃参戦しており、新規プロジェクトの発売ラッシュは火に油を注いだかのように燃え盛っていたのです。

参照過去ログ:プリセールラッシュに入る2018年後半のバンコクコンド市場 2018年10月25日

僕の目に映るコンドミニアム市場景況感と、堰を切った如くのディベロッパーによる発売攻勢といったギャップに大きな違和感を覚え、更に強く警告を発していった様子は以下の過去ログで確認頂けます。

参照過去ログ
2018年後半、バンコクCBDのコンドミニアム市場総括 2018年11月26日
現実と分析の狭間で 2018年12月19日
上場大手ディベロッパー2018年好決算の宴の後 2019年3月21日

それ見た事かと鬼の首を取ったかのように語るつもりはさらさら無いのですが、エポックメイキングなこの市場の変化の本質をまあまあの精度で捉えていたのでは無いかと思います。

市場参加者の大多数がイケイケになっている時に、「それは違う。」といったシュプレヒコールを上げるにはちょっとした勇気が必要です。

当ブログでは、商売したいなーといった欲望から来るバイアスや恣意的な要素を排除して、自分なりの見方を率直に書くようにしているのですが、バンコクのプロの不動産業者と言っても、全てが的中する訳でも決して無いことは改めて言っておきます。

但し、ここに書く意見を参考にしている方も少なからずいらっしゃるでしょうし、読者の方が不動産投資へと実際に踏み切る際に影響を与える可能性がある事も承知しております。

独自のHPサイトで会社を代表して公表している文章ですので、退路を断ち覚悟を持って書いていると言う事だけご理解頂ければと思っています。間違って的を外す事はあっても、作為的に虚偽を並べ立てるような事は決してしません。

つい熱が入ってしまいました。話を戻します。

その後、2018年から2019年に入りホームローンの厳格化、米中貿易戦争の激化に伴う中国通貨の下落と中国政府当局による海外送金の取締り強化により中国人からの投資は激減等の要因が重なり、市場環境は更に悪化してきました。

2018〜19年の市場の潮目の変化、バンコク不動産黎明期の終焉、市場は新常態へ、といった一連の文脈に関しては、上記の過去ログを参照頂ければ分かり易いかと思います。

2020年のバンコクコンドミニアム市場は、低迷が続くと言う以上に更に悪化する可能性の方が高い、と見ています。

2019年に入り、ディベロッパーは新規発売を中止、延期を実施すると同時にあの手この手のプロモーション戦術が功を奏し、積み上がった在庫の処理は急ピッチで進んている模様です。

とは言え、従来の手法で新規プロジェクトを発売しても、2005〜17年のような面白いように売れる市場状況が再来する事はないだろうと思っています。それは、バンコクの不動産市場は黎明期から安定成長期への新常態に移行しているからです。

ディベロッパーは、見た目はいいけど機能性が低く実用性に欠ける、タイ人と外国人価格の二重価格体系、低い施工クオリティ、低い顧客満足度等の誰もが認識している問題を克服する事に今こそ取り組むべきだと思いますし、それなしには新常態に移行した市場で生き残りは難しくなるものと考えます。

地に足を付けて、顧客の声に耳を傾けて、信頼を取り戻すべき時がやって来た、と考えるべきでしょう。

合弁に参画している日系ディベロッパー各社においても、金だけ出して看板を貸すやり方では、企業ブランドにはディスクレジットになりかねないリスクがある事を認知する方がいいのでは無いかと思います。

タイバーツ高も少なからず海外投資家のセンチメントを冷やしているのも事実です。特にアベノミクス前の円高時代を経験している人達は、「驚くべきバーツ高。」という印象を抱いているのでは無いでしょうか?1バーツが2011年時2.5円から現在3.6円と44%も円安となっているのですから無理もありません。


※バーツ円為替レートの推移 出典:xe.com

バーツ高は対ドルにおいても同様で高値圏を維持しています。その辺の事は過去ログ:タイ不動産投資第4号 2019年11月22日 でも取り上げていますので、参照下さい。

タイで会社経営している人で、商売がいい、景気がいい、と言う人は現状ごく少数派です。日々の報道からも、バーツ高により実体経済に及ぼしている悪影響に関しては耳に入って来ますし、MRTやBTS駅での広告スペースが最近は空いている事が多い等、日々の生活を通じてもジワジワと暗雲立ち込める様子が感じられるようになっています。

来年早々にはバーツ安に転じるという人もいれば、誰かが資産を海外に逃しているのでそれが終わった頃にバーツ安になる等といった陰謀説をまことしやかに語る人も出始め、バーツ高に対して抱く国民の違和感は極まれり、といった様相です。

僕的にはこれまで為替予想で当たった事は少なく、むしろ外れる事の方が多いので、予測を記す事は避けておきます。外れる毎に「毎日が適正レート。」とうそぶいて自分を納得させるようなレベルですので悪しからず。

今回で2019年最後の投稿になります。

皆様にとって2019年はどのような年だったでしょうか?

ご愛読頂いている読者の皆様が素晴らしい2020年を迎えられる事を祈念しております。

良いお年を!

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