日本人エクスパットの減少でアパート稼働率低下(その4)

日本人エクスパットの減少でアパート物件の稼働率が92%に下がり6年ぶりの低さを記録、といったCBREの発表に関して、これまで掘り下げて説明して来ました。

低い記録と言うとどうしても否定的な印象を抱いてしまいますが、92%はほぼ満室状況に近い数値ですので、本来であれば「えっ!そんなに高いの?」と思うのが普通の反応かと思います。

人気都市のホテルでも稼働率で9割を越えれば、取れない日が多い超人気ホテルの位置付けになりますので、改めて考えれば、バンコクCBDのアパート物件は安定して強い需要の中で盛況経営されていると考えていいでしょう。


※バンコクCBDアパート物件の需給、稼働率の推移(2019年第2四半期) 出典:CBRE

上のグラフを見るとアパート物件の稼働率は2018年からほぼ横這いで推移している事がわかります。最低を記録した〜と過剰反応するのはむしろ的外れかと思います。

供給を見ると、増えていないどころか2010年頃から減少傾向にあることがわかります。前回のブログで、アパート経営はオーナーが昔からここに土地を持つ地主さんだからこそ実現可能なビジネスモデル、と述べましたが、減少傾向はこのビジネス成立背景と関係していると見ていいでしょう。

年々物件供給が右肩上がりで増加するコンドミニアム物件は、当然アパート物件とも賃貸競合する事になります。2ベッドルーム以上の広い間取りのアパートであれば必ずしもダイレクトに競合する事はありませんが、1ベッドルームの単身用アパートは新築のかっこいいタワーコンドミニアムに比べるとどうしても見劣りしてしまいます。当然、そういった単身用の間取り構成のアパートを所有するオーナーの目には脅威となって写ります。特に新築好きな日本人テナント層は駅近にそびえ立つ豪華タワマンに意識を引っ張られていってしまいます。

そうなるとアパート経営をする地主さんの中には、人気も無くなったし、管理維持も大変なので他のビジネスに振り替えようか?と考える人も出て来ます。駅近では無くてもスクムビットの一等地に土地を所有すれば、その活用選択肢は多岐に渡ります。このようにアパート経営は廃業して他事業へと乗り替えた地主さんも少なからずいたのです。

理解を深める為に、他のデータからも検証します。

2017年第3四半期発表の古い資料となりますが、アパート物件の供給は2011年をピークに減少、需要も2013年をピークに減少、稼働率も2016-2017年をピークに減少している事がわかります。


※バンコクCBDアパート物件の需給、稼働率の推移とエリア毎の供給内訳(2017年第3四半期) 出典:CBRE

バンコクCBDアパート物件のエリア毎の内訳を見ると、何とアパート物件の8割がスクムビットに集中しています。この点においても、アパートビジネスが日本人エクスパットに大きく依存している状況が良くご理解頂けるかと思います。

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