日本人エクスパットの減少でアパート稼働率低下(その1)

今回はアイデオ・スクムビット・ラマ4のベストユニット、お買い得ユニットを紹介する予定でしたが、ある事情で公表を数日遅らせる事にしました。期待されていた読者の皆様にはお詫び致します。もう少々お待ちくださいませ。

2019年の第4四半期は日本人の労働許可証所持者は34,133人で昨年同期比マイナス2.8%、約1,000人の減少になったとCBREより発表されました。


※日本人労働許可証所持者数の推移 (出典:CBRE)

その影響でバンコクのアパート物件(賃貸専用マンション)の稼働率が92%、6年来の低さとなった、とも伝えています。

理由としては、日系企業が、家族持ち駐在員を単身者(独身者)に切り替え、長期駐在からプロジェクトベースの派遣に切り替え、日本人のポジションをタイ人に切り替え等の対応を図っているのが主な原因である、とCBREは括っています。

日系企業が進める諸所の対策としてそのような方向にあるのは確かですが、それだけでは無いだろうと推測しています。

先ず大きな流れを見ると、

1)第2次安倍政権発足後のアベノミクス開始による2012年12月から円安トレンドが開始


※2009〜2019年の対ドル為替レートの推移

2012年には一時78円を記録しましたが、その後2年程で120円を割り込むまで円安が進行。50%以上も円安が進んだ事になります。

リーマンショック後に円高が進み始めた頃からアベノミクスが開始の2012年暮れまでは、円高による製造コスト上昇に喘いでいた自動車、家電他製造業を中心とした多くの企業が中国、タイ他東南アジアへの進出を加速しました。

2)尖閣問題で中国との経済摩擦が勃発後、政府はチャイナプラスワンの政策を推進

経産省では、アジアでの駐在経験がある商社マンOB等数百名をアジア進出コンサルタントとして雇用し、タイ、インドネシア、ベトナム等ASEAN諸国への企業進出を支援しました。某大手商社を定年退職した僕の友人(年齢的には先輩ですが)もその業務に携わり、大活躍をしていました。

その当時はタイに進出した企業はどこも好決算で、現地でお付き合いのある日系駐在員の方々も「日本は業績が悪いけど、タイは絶好調!」と鼻息荒く語っていたものです。

アジア進出も一段落し、円安が以前継続する現在、1ドル80円の時代だった頃程海外に製造ラインを移転する必然性も低下。好決算も陰りが出る中、現地日系企業のコスト削減の一環として、その矛先が高コストな駐在員に必然的に向かったというのが背景です。

日本人駐在員のコストは給料だけに止まりません。住居手当は勿論の事、専用車と運転手、日本からの移動、医療保険、子供の幼稚園や学校手当等々の付帯コストは膨大な額となります。

それが現地のタイ人で代替えが効くのであれば大きなコスト削減に繋がりますし、家族帯同では無い単身者であれば住居手当、教育手当等の付帯コストは下げられるわけです。

但し、日本人駐在員が担ってきたポジションをいくら業務経験と共に能力を研鑽したからとは言え、日本人からタイ人に交代させるのは言うほど簡単ではありません。本社のある日本とのコミュニケーション、他日本人幹部との連携、忖度やら空気を読むやらといった慣れない日本企業風土等々そこには大きな壁が立ちはだかります。

超えるべきハードルが高いのは、その新しく日本人駐在員ポジションに入れ替わるタイ人候補生の能力の問題では決してありません。日本本社を見て仕事をする中央集権的な日本企業独特の多様性の欠如が大きな問題としてあるのでは無いかと感じます。

仕事柄僕自身も日系駐在員の皆様と直接コミュニケーションをとる機会も多いのですが、そういった会話の端端からもローカライゼーションに四苦八苦している様子がよく伺えます。

家族帯同の駐在員から単身者に切り替えていく方向性は確かに顕著に見受けます。但し、製造業の熟練エンジニアともなれは年齢的に家族を持っている人がほとんどですので、ここにおいてもやはり言うほど簡単では無いようです。

それではなぜ何故昨年同期比から1,000人もの減少を記録したのか?

その点に関しては、次回もう少し掘り下げて見て行きたいと思います。

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