現実と分析の狭間で

本日の日経インターネット版で西鉄(西日本鉄道)がバンコクの大手ディベロッパー(記事では中堅ディベロッパーとなっていますが、間違いなく上場大手の一角かと思うのですが)SCアセットとの合弁でマンション開発を行うとのニュースを見つけました。


※西鉄、タイで分譲マンション開発  出典:日経

同社がスクムビットアソークの一等地でホテルを建設中である事は知っていましたが、コンドミニアム開発にも進出、しかも合弁先はSCアセット。既に多数の現地有力ディベロッパーは日系ディベロッパーとの共同開発を行なっており、例外はノーブルディベロップメント、スパライ、LPN等でむしろ合弁していない会社の方がマイナー派といった感じです。

これまでの合弁事業による開発をまとめると以下の通りとなります。

アナンダー三井不動産
AP―三菱地所
オリジンー野村不動産
サンシリー東急
セナー阪急不動産
オールインスパイアーフージャース+JR九州
プロパティパーフェクト(+グランドアセット)―住友林業
レイモンランドー東京建物
SCアセットー西鉄
シンハエステートーダイワハウス

他にはサンキョーホームズ+京阪不動産というのもありますが、こちらは日系ディベロッパーの現地法人と日本法人との組み合わせですので、タイ+日系の組合せとは異なります。

現地のビジネス関連フリーペーパーに必ずこの手の合弁開発は取り上げられますので、改めてネットで確認すると、今年のものだけでかなりのニュースを発見しました。

一部を抜粋しただけでも次の通りで、まさに日系企業の堰を切ったようなタイ不動産市場への進出状況が見て取れます。


※日系企業の進出状況1       出典:newsclip


※日系企業の進出状況2       出典:newsclip

日系企業の右に倣え的な進出状況を見ると、遡ること30年近く前にその頃住んでいたシドニーで目の当たりにしたバブル崩壊のあの光景がどうしても蘇ってきます。

その辺の下りは、過去ログ:衰えない近隣諸国からの不動産投資熱 で触れていますので、参照願います。

一方現地不動産最大手CBREの予想は、次のようになります。


※バンコクの分譲マンション市場、不透明感増す   出典:newsclip

僕が前々回書いた2019年のコンドミニアム市場は低迷か?(その1)に類似した内容となっています。

予想する今後の市場と日系ディベロッパーが続々と進出する現実の間の大きなギャップは一体何なのでしょうか?

僕の見解は、2018年後半、バンコクCBDのコンドミニアム市場総括 で説明した通り、潮目の変化は既に大きく起きており、合弁事業の多くは販売が低迷するものと思っています。

これらの合弁事業は、プロジェクトプランそのものはタイ側ディベロッパーがほぼ全てを担ってはいるものの、出資に至るまでの交渉、契約までには相当な時間がかかっているはずです。特に社内での根回しやりん議に時間がかかる日本の会社は、意思決定に至るまで相当な月日を費やすのが通例です。

バンコクのコンドミニアム市場にフロントランナーとして飛び込んだ三井不動産(2013年)、三菱地所(2014年)の成功ぶりを見て、後に続いた日系企業のほとんどが2017年、2018年になってやっと進出を成し遂げたものの、その頃には長く続いたバンコクの活況は終わりの始まりを迎えており、好機を逃してしまったというのが話の流れなのではないかと見ています。

プリセール投資必勝の方程式は既に終焉した、と今まで何度となく説明してきましたが、戦術を変えて完成後登記前物件や賃貸の付きやすい築浅人気物件をターゲットにすれば安定収入を得られる投資チャンスがあるものと思っていますし、プリセール物件の中には、現状の市場に対応する形で、条件が揃っているにも関わらず価格を抑えたプロジェクトも目にするようになりました。

プリセール物件、登記前物件、築浅中古物件のメリット、デメリットをよく理解し、的確な物件を購入すれば一定のキャピタルゲイン、5〜6%の利回りを安定して得られる、これがバンコクの不動産市場における新常態となってきているのだと僕は考えています。

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