2018年後半、バンコクCBDのコンドミニアム市場総括

2018年後半に入りプリセールされたスクムビットのラグジュアリーコンドミニアムプロジェクト6件をピックアップし、その内4件を取り上げて、簡単ではありますがご紹介してきました。

それでは、過去ログ「プリセールラッシュに入る2018年後半のバンコクコンド市場」で書いた通り、今回は、あくまでも私見とはなるものの現状分析を加えて総括していきたいと思います。

先ずは現地主要英字新聞バンコクポストに11月12日付で掲載されたニュースが参考になるので抜粋してご紹介します。


2018年第三四半期にバンコクCBDでプリセール販売されたコンドミニアムの販売率は31%にとどまった。2017年の同時期の販売率58%、前期2018年第二四半期の実績47%からも大幅に低下する結果となった。

CBDでプリセールされた51%のプロジェクトはラグジュアリークラスで最も多く、その次に多かったのは更に高額レンジとなるスーパーラグジュアリークラスであった。

第三四半期プリセール価格の平均平米単価は330,447バーツで、第二四半期の平均価格とほぼ変わらなかったものの、2017年同時期と比較すると32%の大幅上昇になっている。

平均価格は横這いの結果ながら、発売ユニット数を比較すると、第二四半期852ユニット、第三四半期1636ユニットと92%の大幅増加となった。


 

第三四半期のバンコクCBDにおけるプリセールの販売率は大幅ダウン、というのがその結果でした。

前出の過去ログ「プリセールラッシュに入る2018年後半のバンコクコンド市場」で次の点をレポートしました。


・2018年第2四半期は発売ユニット数8511と、前期比約61%、対前年同期比63%と大きく減少しましたがが、第三四半期は22,597と、前期比261%、前年同期比120%と大幅な伸びを見せています。この22,579戸という発売数は、プロジェクト数としては47件で構成され、四半期毎の数値としては過去最高との事です。

・第三四半期は3086戸、発売数全体の13.7%がバンコク中心部でのプロジェクトであるとColliersが言っている通り、9月ぐらいからバンコク中心部での新規売り出しが目立ち始めました。

注)バンコク中心部とCBDはエリアの大きさが違います。CBD=Central Business Districtは、シーロム・サトーン地区、ルンピニ地区、アソーク〜トンローのスクムビット地区のみを指し、バンコク中心部内のコアエリアとなります。


 

まとめると、2013年第三四半期はバンコクCBDではプリセール販売が大幅増加となったにも関わらず、販売率は大幅ダウンの結果となったという事です。

気になるのはラグジュアリー&スーパーラグジュアリークラスの平米単価は昨年同期比よりも32%も上昇し、33万バーツ以上となっている点、そしてバンコクポストによるとこのCBDのラグジュアリークラス以上の買い手はタイ人富裕層が依然大多数で、外国人では無いという点です。

バンコクCBDの高額物件になると中国人を中心とした外国人による購入は少なく、タイ人富裕層による購入者が主体となるが、価格が上がり続ける中セレクティブになっている為販売率が大幅に減少している、というのが結論となります。

つまり当ブログでも何度か言及している、バンコク不動産市場の潮目の変化を裏付ける内容となっているわけです。

プリセールラッシュとなっているのは、売れるからというのが理由では無くて、売りたいからという市場を鑑みないディベロッパー側の思惑によるものだと考えていいでしょう。

そして価格性に関しては、過去ご紹介した4件のプロジェクトの通りで、一概にどれもが割高とは言えませんが、バンコクCBDラグジュアリー物件の平均プリセール価格の上昇トレンドに即したものであることは間違いありません。

潮目が変わった市場の中で、今回取り上げた6件のプロジェクトにおいても今後順調に売上が推移するとは思えず、かなりスローな販売が続くものと予想します。ディベロッパー側は、広告宣伝費を更に投入して、登録して購入すれば最大1ミリオンバーツ値引き、利回り保証等の多種多様なプロモーションを展開するものと思いますが、価格を上げてから値引きする等の手法には既に富裕層購入者は慣れきっていますので、通り一遍のやり方ではセールス鈍化の流れを変えるのは難しいのではないかと思います。

実質的に値引きする(変な言い回しですが)、ディベロッパーが顧客からの信頼を破壊する一番やりたく無い手段ギリギリのところまでは少なくとも行くのではないかと見ています。

加えて、ピックアップした6件のプロジェクトにおいて、低迷する販売率を克服する打開策が打たれているか?という点に関しても、The Fine Bangkokで日本的な間取りコンセプトが若干導入されている以外は、そのようなポテンシャルを秘めたものは全く見ることができなかったというのが印象です。

もう一つ目を向けなくてはならないのは、昨年暮れぐらいから常態化している、プリセールでは完売した程の人気プロジェクトが登記前の投げ売り価格で市場に出始めた状況です。

これは今現在でも、ライフアソーク、アイデオモビアソーク、リズムエカマイ等の物件でその流れは引き継がれており、今後はどんな人気物件でも利ざや狙いの購入が多かった物件はどれも例外なく同様の状況になっていくと見る方が自然かと思います。

つまりプリセール購入によるキャピタルゲイン投資の必勝方程式は既に崩れており、昨年比30%以上も値上がりしたプロジェクトに追従し購入する事はリスクが高い事を示唆しています。

プリセール物件だからといって盲目的に新しいプロジェクトに飛びつく時代は終わりました。

プリセール物件に関しては慎重な分析と選択をしながら、登記前の投げ売り物件等の情報にも気を配り、利回り実績の高い築浅中古物件も検討する、といった手間のかかるプロセスを実践しなければ、安定成長期に入ったタイ不動産で成功するのは覚束なくなってきたのではないかと思います。

プリセール物件を早いステージで購入してキャピタルゲインを手にする、といった投資の醍醐味をタイ不動産投資を通じて味わった人は少なくないと思いますが、今は、そのような熱狂の時代、不動産黎明期が既に終わったのだ、と認識するのが賢明なのではないかと思います。

その代わりに、コンドミニアム法によって外国人所有が他アジア諸国に比べて手厚く保護されている法的な側面、比較的安定しているバーツ現地通貨、5万人を超える駐在員を中心としたスクムビット地区に集中する大規模賃貸需要等々、近隣発展途上国では得難いメリットもタイには多数ありますので、エキサイティングな投資局面は減少しても、不動産価値の維持、安定収入の確保といった面ではまだ大きな魅力のある不動産投資先ではないかとも見ています。

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