海外不動産投資の光と影

不動産は株などのペーパーアセットとは異なり、流動性や透明性は低く、立地他の複雑なローカル事情が絡む飽くまでローカルアセットです。グローバル経済の影響は受けるものの、その価値はローカル市場要因で規定される投資案件となります。

道路や公共交通網などのインフラ開発、商業施設開発、それに伴う住環境の変化、ディベロッパーのブランド力の変化、等々ほぼ全ての要因はローカルなものに帰属します。

不動産は生き物とよく言われます。生物学的には勿論間違っていますが、考え方の表現方法としては的を得ていると思います。

ですので、日本の書店の店頭に並ぶ「今は〇〇の海外不動産が熱い。」、「今は〇〇の不動産を買いなさい。」等の謳い文句を聞くと不快感すら覚えます。そういった機会が一定の経済途上の中で存在することは否定はしませんが、だからと言ってどれを買ってもいいわけでは決してありません。

中にはそのブームを利用して味噌も糞も一緒にしたような詐欺まがいの商売をするような業者もあり、それに乗せられて購入する人の末路に思いが行ってしまいます。勿論、チャンスを見事に掴み、的確な投資を行い成功する人は多くいますが、踊らされて間違った物件を購入し困っている人も少なからず目にします。又、日本人業者による正真正銘の詐欺事件も事実発生しています。

参照過去ログ:アユタヤの45億円規模の投資詐欺事件

最終的には自分の投資なのですから自己責任である事は当たり前ですが、だからと言って業者が無責任な宣伝をしていいのか?と常々思います。投資へのアドバイスにはベストを尽くしますが、「必ず不動産投資は成功します。」、などとは決して言えませんし、不測の事態が発生する可能性も勿論あるのです。

日本人が先ず住まないようなコンドミニアムを購入して、売るに売れず、貸すに貸せず、といった物件を持て余した人がよく弊社に問い合わせてきますが、そのようなケースになると先ず解決は不可能です。

別に日本人にこだわらなくても、世界各国からの長期滞在者に人気のあるシーロム・サトーン地区、ルンピニ地区や中国人が集中するラマ9世辺りであれば、手間はかかるものの出口プランを立てる事は可能ですが、その他の全く外国人がいないようなエリアになりますと窮地からの脱出は絶望的になります。

自己解決を試みて現地の不動産会社を通じて賃貸募集する、といっても言葉と商習慣のハードルは高く、空室である限り物件管理は自分に重くのしかかって来ます。最後にはタイ人に激安価格で引き取ってもらうぐらいの出口しか見つからないのですが、そこにはやはり又言葉の壁が立ちはだかるのです。結果として、一つもいい事なく、海外不動産投資は幕引きとなるわけです。

前回のブログでは、日本人が極端に集中する日本人居住区であるスクムビット地区での賃貸投資をご紹介しましたが、これなどは海外不動産投資の入口としては非常にリスクが低いものと確信しておりますし、投資メリットは賃貸利回り収入のみならず、あってないような相続税、導入されたとしても日本よりはずっと低い固定資産税、といったメリットも享受でき、更に的確な物件選択をすればキャピタルゲインを得られる可能性も少なくはありません。

現在発展途上にあるベトナム、カンボジアなどの周辺国で見られるような不動産価格が右肩上がりに上昇する、といった勢いのある時期はタイでは終焉を迎えています。その反面、不動産取引の透明度、法的整備といった面では、安心して売買をすることが可能です。

又、日系企業の進出は製造業が中心ですので、自動車産業に見られるように高い産業集積度においては一定のレベルに到達しているタイでは、駐在員数が短期で激減するといった事はありませんので、多少の増減はあるにしてもスクムビットの日本人居住区が衰退するような事態は起こり難いと思います。巨大な賃貸需要は今後しばらく無くなる事はないのです。

おすすめ