価格のねじれ現象(その4)根底にあるのは不動産市場の変化

これまで3回に渡って書いたプリセール価格がリセール価格より高い、といったねじれ現象について説明をしてきました。その経緯はこれまでに詳しく書きましたが、ざっくり言えば以下の通りです。

ディベロッパーによる市場、そして自らの販売力への過大評価により不的確な値上げを行った結果、市場価格から乖離した。具体的には、予想に反して転売価格が上がらなかった為に、過剰な値上げを行ったプリセール価格が逆転した、ということです。

もう一つ付け加えて置きたいのは、香港を始めとした海外市場との絡みによる要因です。

5年ほど前からは近隣アジア諸国からの不動産投資が顕著に伸びを見せ、現在ではハイクラス物件以上の市場の主役に躍り出るほどの勢力となりました。

1年ほど前に書いたブログ、衰えない近隣諸国からの不動産投資熱、を参照願います。

サンシリ、AP、アナンダなどの大手ディベロッパーはいち早くこの流れを掴み、今では海外先行販売、同時発売などを決行し国内マーケット以上に重視する程になっています。

香港の大手不動産会社では、人気プロジェクトともなれば100件以上のユニットを2日ほどで完売させる程の販売力がある、とディベロッパーの担当者より聞いた事があります。決して無視できない存在どころか、従わざるを得ない程の影響力を握るようになったのです。

そういった業者はかなりのリベートを要求してきますので(これは世界共通ですね)、近隣アジアの市場を頼りにしたディベロッパーには、その支払いを当て込んで値付けをしていった要素も少なからずあったようです。結果タイ国内での購買力や市場価格は無視され、香港などの市場で十分に売れる上限の価格水準が値付けの考え方にすり替えられていった節があります。

香港のハイエンドマンションは東京の2倍近くの価格ですので、そのような値付けをしてもバンコクの不動産価格はかなり割安に感じたはずです。勿論、これは全てのコンドミニアムプロジェクトがその例ではありませんので、誤解なきようにお願いします。

 


※世界主要都市、ハイエンドマンションの価格比較(出典:一般財団法人 日本不動産研究所)

ディベロッパーにとって、売れていますよー、今買わなきゃ無くなりますよー、というのが販売の常套手段です。もっともこれは不動産以外にも言える事ですが・・・。

事実として、2010〜15年ぐらいの間のプリセール現場は、人気プロジェクトともなれば、早朝から人が並び、新しいiphone発売日さながらの熱狂ぶりでした。

参照過去ログ:コンドミニアムプリセールの現場風景

都心部のプライムロケーションの土地の高騰も当然背景にはありましたが、それをうわまる形でハイエンドコンドミニアムの価格は上昇。売れ行きの鈍化を市場に悟られる事を危惧したディベロッパーの常套句「売れていますよー。」は、いつの間にか現実にそぐわない誇大広告となり、そして最近となっては意図して作り上げられた虚構にまで成り下がったわけです。

ねじれ現象の経緯は上記の通りですが、実際その根底にあるのは、不動産市場の潮目が変わった、という事なのだと思います。

バブルでは無いにしても、プリセール価格の上昇は市場許容度の臨界点に達し、都心部プライムロケーションのハイエンドプロジェクトにおいても、例外なく売れ行きが鈍化し、在庫が積み上がりました。

そしてその結果として、プリセール購入必勝の方程式が崩壊しつつあります。

参照過去ログ:新しい局面を迎えたバンコク不動産投資

これからのバンコク不動産投資は、プロジェクトの厳格・適性査定に十分な注意を払う事なしに成功でき得ません。当たり前のように聞こえますが、その基本が無視されていた事も多かったのでは無いかと思います。

プリセール投資に見合わないとの評価であれば、完成後登記前(=Sell Before Transfer)に照準を絞った方が得策となるわけです。

このように現在のバンコクの不動産投資は大きな節目を迎えており、投資家はそれに応じた形での投資手法を取るべき局面にあるのです。

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