バンコクのラグジュアリーコンド、賃貸投資から見た購入すべき物件価格の目安

セレス アソークは、ラッキーリビングという知名度の低いディベロッパーによるマイナス評価はあるものの、圧倒的な立地の良さ、ラグジュアリー物件としての十分のスペックを有している為、前宣伝を目にした時は「これだったら欲しいな。」と思わせるには十分な説得力を感じました。でも前回のブログでも書いた通り、プリセール会場に足を運ぶことはありませんでした。

 

いつもながらの直感的な判断ではありましたが、そのジャッジの背景にはどのような思考があったのか、ここで整理してみましょう。

 

自慢する訳では決してありませんが、弊社はバンコクの賃貸市場のシェアはトップクラスにあると思います。ですので、コンドミニアム(分譲マンション)は勿論の事、サービスアパートやアパート(ワンオーナー所有の賃貸マンション)の価格情報や日系現地法人の家賃時補助額等の情報は正確につかんでいます。

 

弊社の顧客は大手企業の駐在員が中核になっている事を先ず前提として理解してください。

 

人気コンドミニアムの家賃相場を見ると、エリアにもよりますが、日本人の最も多いトンロー・プロンポン・アソーク地区では平米賃貸単価800~1,000バーツぐらいです。広さで言えば、1ベッドで40~60㎡、2ベッドで65~100㎡です。

 

賃貸コンドの実例を下記します。全て月当たりで計算しています。

 

クワトロ バイ サンシリ (トンロー)

1ベッドルーム55㎡ 平均家賃相場は5.5~6万バーツ 家賃平米単価1,000~1,090バーツ

2ベッドルーム84㎡ 平均家賃相場は7.5~8万バーツ 家賃平米単価892~952バーツ

 

HQ バイ サンシリ(トンロー)

1ベッドルーム43㎡ 平均家賃相場は4~4.5万バーツ 家賃平米単価930~1,046バーツ

2ベッドルーム74㎡ 平均家賃相場は6.5~7万バーツ 家賃平米単価878~946バーツ

 

ルンピニ 24(プロンポン)

1ベッドルーム38㎡ 平均家賃相場は3.5~4万バーツ 家賃平米単価921~1,053バーツ

2ベッドルーム55㎡ 平均家賃相場は5.5~6万バーツ 家賃平米単価1,000~1,091バーツ

 

ブライト スクムビット 24(プロンポン)

1ベッドルーム67㎡ 平均家賃相場は5~6万バーツ 家賃平米単価746~895バーツ

2ベッドルーム92㎡ 平均家賃相場は7~8万バーツ 家賃平米単価761~870バーツ

 

エッジ スクムビット 23(アソーク)

1ベッドルーム43㎡ 平均家賃相場は4~4.5万バーツ 家賃平米単価930~1,046バーツ

2ベッドルーム62㎡ 平均家賃相場は6~6.5万バーツ 家賃平米単価968~1,048バーツ

 

※トンローの人気コンドミニアム、クワトロ バイ サンシリ

 

上記は全てタワーコンドミニアム(分譲マンション)なので、家賃は階数や眺望、間取り、内装・インテリア等で価格に大きなばらつきがあります。大まかな実数値としてインプットしてください。

 

コンドミニアムを借りる世帯は、単身、夫婦のみ、未就学児童の子供一人までの家族で占められています。就学児童6歳以上の子供がいる家族になりますと、どうしても広さを求めますので、家族向けの広いユニットが多数を占めるアパート(ワンオーナー所有の賃貸マンション)が通常選ばれます。実際、アソーク~トンロー地区では日本人家族世帯ばかりで占められるアパート物件が多数あります。

 

古いものも多いのですが、維持管理が良く、定期的に改装等も行っておりますので状態は悪くありませんし、キッズルームや屋外の遊び場や子供用プール等の家族向けファシリティを備えています。又、オーナーや管理人は日本人家族に慣れているので、行き届いたサービスが提供されており、勝手を知らない海外生活に不安を覚える駐在員家族には高い人気があります。

※バンコクの有名アパート、39ブールバード

 

アパートと聞くと、日本人であれば日本でよく見る○○壮といった安アパートをイメージしがちですが、バンコクではタワーコンド顔負けの豪華高層アパートが多数あります。昔からの地主が自ら建てアパート運営を行っている為、広いにも関わらずリーズナブルな家賃設定で利益を上げる事ができます。日本人居住区中心のスクムビットでは地代がかなり高いので、新たに土地を購入してとなるとコスト的には難しいのが現実でしょう。

 

話はそれましたが、コンドミニアムに居住する家族世帯が単身、夫婦のみ、未就学児童の子供一人までの家族で占められる理由が理解頂けたかと思います。50~60平米の2ベッドを借りる単身者も少なく無く、第2寝室は物置や日本から家族が来た際に使ったりしています。

 

最近のプリセールスコンドミニアムの市場価格を見ると平米単価30万バーツ以上のものが目に付くようになりました。プロンポンのMARQUE、VITTTORIOやトンローのTELA、KHUN by yoo、THE BANGKOK THONGLOR、THE MONUMENTといったプロジェクトは、どれも平米単価は30万バーツを大きく上回っています。

 

仮に平米単価を30万バーツと設定すると50平米の1ベッドルームで価格は15ミリオンバーツになります。賃貸平米単価はどんなに頑張っても1,200バーツ/月がやっとでしょうし、それでもテナント付けは簡単ではありません。家賃は6万バーツですので、賃貸利回りは表面で4.8%となります。内装・インテリア等のコストや管理費、業者に支払う賃貸の成約コミッション等が加わりますので、実質利回りは4%程となるはずです。賃貸人気物件となればいいのですが、そうならない場合は悲惨な結果となります。

 

賃貸平米単価はどんなに頑張っても1,200バーツ/月がやっとでしょうし…、と書きましたが、それには理由があります。

 

バンコクCBDには多数のサービスアパートがあります。サマーセット、センターポイントといった有名チェーンの他にも、高級ホテルチェーンのマリオットが経営するものや、タイの企業や地主が開業するもエコノミークラスのものまであります。

 

サービスアパートでは、清掃などのハウスキーピングサービス、日本語テレビ放送。電気代等が料金に含まれる、家賃を合わせたパッケージ価格となっています。館内にはレストランもあり有料にはなりますが、日本食を始めとした食事サービスを受ける事も出来ますし、朝食付きプロモーション家賃の設定等も珍しくありません。

 

5スターホテルと比較しても見劣りしないグレードのサービスアパートでも、家賃6.5~8万バーツ程で1ベッドルームの部屋が賃貸可能です。エコノミークラスのものでも5万バーツ以上であればかなりの供給があります。

 

部屋も決して狭くなく、55~70平米ぐらいのものが一般的なサイズとなります。日本人居住区のデラックスクラスのサービスアパートの平均家賃が平米単価1,150バーツ/月程で、ハウスキーピング他のサービスが価格に含まれております。勿論プール他のファシリティもホテル並みですので、ラグジュアリーコンドミニアムと同等です。

 

※トンローの人気サービスアパート、サマーセット トンローのユニット

 

上記の通り、家賃平米単価1,100/月バーツ以上の価格レンジになると、賃貸の競争相手としてサービスアパートがそこに立ちはだかります。サービス他の付帯コストが含まれていますので、現地に慣れない赴任1年目ともなれば強力な選択肢となるのです。

 

去年完成したTHE XXXIX by Sansiri(ザ 39 バイ サンシリ)というサンシリ社によるラグジュアリーコンドがあるのですが、クワトロやHQという人気コンドを手がけたサンシリ社の物件であるにも関わらず賃貸人気は今一つです。立地はソイ39の入口からさほど離れていないので、悪くないどころか日本人が最も好むエリアの一つです。物件グレードも非常に高くハイソ感に溢れています。

 

通常であれば即人気物件となるのですが、そうはならずに1年が経とうとしています。その理由は家賃設定が高いからに他なりません。1ベッドルームは55㎡前後のサイズが多いのですが、家賃設定は6.5~7万バーツが主流となります。平米賃貸単価は1,180~1,272バーツ/月です。2ベッドルームは80㎡前後で8.5~9.5万バーツなので、1,062~1,187バーツ/月。

 

THE XXXIX by Sansiri(ザ 39 バイ サンシリ)の市場価格は平米当たり29万バーツ程となっていますが、25~27万バーツぐらいで購入している人が多いと思います。バンコクCBDの賃貸利回り平均5~5.5%で設定した結果が上記の家賃設定となるわけですが、これではテナント付けは難しくなります。

 

※プロンポンの新築コンドミニアム、ザ 39 バイ サンシリ

 

以上のような理由で、賃貸利回りを目的とした投資を考えた場合、バンコクの日本人居住区では購入平米単価25万バーツが上限の目安になるのです。

 

勿論、投資目的は賃貸利回りのみではありません。

 

最近目にする30万バーツ以上のプロジェクト、価格が価格だけに即完売とはいかないようですが、近い将来に街のランドマークとなるようなビンテージ物件候補のプロジェクトの売れ行きは決して悪く無いようです。利回り投資では分が悪くても、ビンテージ物件となるようなプロジェクトをプリセール初期の安値で購入すれば、キャピタルゲインが得られるでしょうし、出口プランも立てやすいと思います。

 

結論として、冒頭で触れたセレス アソークを買わなかった理由は、十分な賃貸利回りは得られないだろうし、ビンテージ物件の候補とは認められなかった、という点にあります。

 

僕の直感がいつも正しいとは決して思いませんし、もしかしたら意に反して大化けする可能性もあります。正直言って、予想が外れる事も少なからずあるのです。

 

この直感がどう転ぶのか分かるまでは未だ時間がかかりそうです。

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