洪水はコンドミニアムマーケットを後押しする?

 

ここ1週間というものタイのほぼ全土で豪雨に見舞われ、バンコク中心部でもあちこちで通りが冠水する事態となりました。

 

※バンコク冠水(出典:バンコクポスト)

 

ここ10年ほどでバンコク市内各所に大型の排水トンネルが設けられ、洪水・冠水に対する耐性は大幅に向上しましたが、それでも今回の豪雨では所により1時間で169ミリという降水量を記録。この数字はバンコクの排水能力の3倍を超えており、こうなると洪水をくいとめる術はなく、現在バンコク都庁は2つの大型排水トンネルを建設中であるものの、更なる対策の検討に迫られている模様です。

 

昨日もほぼ1日中振り続けており、日本で言うゲリラ豪雨といった強烈な状態も朝から数時間続きました。東南アジアではスコールと呼ばれる短時間で集中的な降雨が典型的ですが、昨日はそれが長時間に及びました。僕も事務所の窓から眺めていましたが、日本でよく表現される「バケツをひっくり返したような土砂降り。」では言葉が足らず、「プールをひっくり返したような。」と言った方がより的確に状況を射止めていると感じます。水煙で視界10メートルといったところでしょうか。

 

ヨシダ不動産はアソークとプロンポンの中間エリアであるスクムビットソイ25とまさにバンコク中心部にあります。やはりスクムビットの中心部でもあちこち冠水が発生しました。

 

この時期の雨であれば2時間程の豪雨で冠水すると2時間程で水が引いていき、いつも以上にひどい渋滞が発生する程度で大きな被害にはなりません。

 

しかしこれが続くと、雨季の後半ともなればダムの水位が上昇し果てには決壊、それが川やバンコク市内に多数ある運河の氾濫を招きます。バンコクは東洋のベニスとの異名がある事を思い出して下さい。ベニスには芸術的な美しさでは及びませんが、運河の数は凌駕します。そして、排水トンネルも機能不全に陥り慢性的な大洪水を引き起こすのです。

 

2011年10-11月はまさにそういった事態に陥りました。上流から徐々に水位が上がり始め、アユタヤ地方では大洪水となり工業団地内の多くの工場が操業停止となりました。そしていよいよドンムアン空港周辺まで洪水は押し寄せてきました。

 

その頃になると多数の日系企業の駐在員やその家族は日本に一時帰国、またはパタヤなどでホテルの客室を確保し避難するといった対応を図っていました。

 

バンコク市内の小売店では飲料水が買い占められ、ついには1本も買えない状態に陥りました。その頃僕自身もバンコクにおり、危機感を抱いたのを覚えています。そして間も無くバンコク中心部も洪水が到達するとの予想の中、パタヤに2週間程避しました。余談にはなりますが、パタヤのコンビニに行くとペットボトルの飲料水が普通に売られており、拍子抜けしました。緊急時の物流システムの脆弱さを垣間見た次第です。

 

そしてタイトルにあるコンドミニアム市場はどのように動いたかと言うと、さすが2011年のプリセール価格は前年度割れこそしたものの、2012年からは価格も着工数も上昇に転じ、2013-15年は大幅上昇の結果となり、現在に到るまで安定上昇が続いています。

 

洪水問題が解消した後は、その頃の現地新聞にも掲載されていましたが、バンコクでは一軒家よりも集合住宅の方が安全だとの認識が大きく植え付けられ、その感情がコンドミニアムマーケットを押し上げたとの事です。

 

タイ人は日本人と似て伝統的に土地付き一軒家思考が強かったのですが、慢性的な市内の渋滞問題、1999年のBTS開通に端を発したマストランジットインフラの充実化、などが都市への人口流入を助長。そしてそこに洪水といった自然災害が更なる後押しをする結果となりました。

 

タイの人口6,700万人に対して、バンコクの人口は2010年時点で(資料が古くてすいません)825万人、周辺県を入れたバンコク都市圏はなんと1,600万人(2016年時点)を超えていますので、人口の集中化は日本のそれを軽く超えています。

 

この都市化は更に進んでいますので、バンコクが東京の人口を超える日がいつか来るかもしれません。バンコク中心部のコンドミニアム価格の上昇も何ら不思議ではないことが改めて分かる訳です。

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