タイのコンドミニアムの間取り(その5) エアコンの設置

つい5年程前、日本で新築マンションを視察した際に、各部屋の窓際にエアコンの設置場所が予め設けられていることを発見し、妙に感心した事を今も覚えています。
その理由は?
皆様の予想通りです。タイではそうなっていないのが一般的だからです。
日本のマンションの設置プロセスを見ていると、既に窓際の壁の上隅あたりにパイプを通す穴がはじめから開けられており、その脇にエアコンの室内機を設置するのでパイプの露出は最小限に留まります。又、パイプカバーを付けるので美しいとは言えないまでも、ちゃんとした体裁は残ります。
そしてすぐ外側のベランダに室外機を設置し、完了。室外機と送風機の距離が最短で設置されるので、熱効率もいいのではないかと思います。
タイにおいては、元来日本のマンションに比較すると一室一室が大きかった理由から、エアコンの送風機も大きかった為、天井裏に設置、見栄えのいいケースをつくりその中に格納、気にせずそのまま設置等の施工が一般的でした。
又、その当時のエアコンは日本で見慣れたものと違って、コンパクトでもないし、インテリア性などかけらも無いので、そのまま設置するような場合はとても見るに耐えない醜悪な概観となります。
一方、屋根裏やケース内に納めるビルトイン形式の場合、見た目的には悪くないのですが、天井裏を深く確保するために天井が低くなったり、ケースが大ぶりなので居住空間を犠牲にしたり、という弊害が生じます。
さらに大きな問題はエアコンを買い換える際に起こります。
ここ5~10年の間、エアコンの省エネ化はずいぶん進みました。省エネモデルの導入により、かなりの額の電気代が抑えられる事は誰もが知るところとなっています。
そしてここは常夏のタイランド。部屋にいる際にはエアコンはつけっ放し、というのが当たり前です。ですので、タイでは電気代=エアコン代と考えても過言ではありません。
弊社のお客様となる駐在員ファミリーが住む部屋の大きさは、200㎡を超えることも珍しくありません。そして、そこにあるエアコンが古かったりすると、電気代はすさまじいものになります。一ヶ月に1万バーツ以上使う、といったことも良くあり、日本円計算で3万円以上になります。厳しい出費ですよね?
当然これらも省エネタイプに変えることにより出費は抑えられるのですが、大家さんは自分で電気代を払うわけではないので、簡単に事は運びません。
そして、もう一つの大きな問題がそこには立ちはだかります。先述した、「さらに大きな問題はエアコン買い換えたりする際に起こります。」という点です。
エアコン技術の進化とともに、大出力でも比較的コンパクトな壁掛けタイプが売り出されるようになりましたが、旧来型のエアコンをビルトイン施工している場合、その交換には大きな内装工事が伴います。多くの人が古いタイプのエアコンを使い続けている理由には、そこら辺の事情が大きく作用しているようです。
又、設置できる場所が窓から遠かったりすると、パイプをむき出しにするのは避けたいので、様々な内装の工夫が必要になります。
実際、僕自身リノベーション時にエアコンを省エネタイプに交換するに当たり、この点は頭痛の種でした。
写真が残っているので掲載します。
※エアコン(ビフォー)
aircon_before
以前は、大ぶりなエアコンを木製のケースに被せ設置していました。これは室内空間をずいぶんと圧迫していました。
※エアコン(アフター)
aircon_after
三菱製の省エネエアコンを入れました。鏡の裏にパイプを通しうまく隠しています。
寝室からは随分な長さのパイプをバルコニーにある室外機までつなげています。熱効率は悪いかと思います。
上記から、エアコンの設置場所が決まっていない事により、様々な弊害をもたらす状況がご理解頂けたかと存じます。
又、長いパイプを通す施工がメーカーの定める規格通りに行われていない杜撰な施工も多く、これにより水漏れ等の問題を引き起こすケースも少なくありません。
そして、この問題は、弊社がお客様から受けるクレームの1、2位を争っています。
駐在員世帯の多くはハイクラスレジデンスに住まれているので、エアコンそのものはダイキン、三菱等の一流製品で申し分ないのですが、施工が駄目なのです。
屋根裏のビルトイン、内装をかっこ良くしてのビルトイン‥等は、部屋の美観形成としてはいいだろうと思いますが、電化製品なので交換の日はいつかやってきます。そういった事を考えると、省エネコンパクト壁掛けタイプに一票、が僕の結論です。
エアコンの設置に関しても、タイの物件はまだ伸びしろがあるのではないかと感じています。

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