中古コンドミニアム バイヤーズガイド トンロー編(その3)

前回までは、トンロー地区としてBTS駅から北側の、トンロー通りを中心に立地するコンドミニアムをご紹介しました。
3回目となる今回は、BTSトンロー駅周辺に立地するコンドミニアムについてご説明する事にします。
一般的に言えば、バンコクにおいても他海外大都市と同様に駅近物件が立地上の優位を確保すると同時に、賃貸マーケットでも優位に立っていますが、このトンロー地区に関しては必ずしもそうではありませんでした。
何故でしょうか?
これは日本人駐在員世帯の特殊性に起因している、と言っていいかと思いますので、日本人賃貸マーケットに限定しての事象と捉えて下さい。
ただ賃貸料によるインカムゲイン狙いの投資家の皆様も日本人テナントを想定しているかと思いますので、十分参考になると思います。
トンロー地区で賃貸物件に居住する日本人は、ほぼ全員が日系企業に勤務する現地駐在員とみて間違いないでしょう。このエリアはアソーク、プロンポン同様に家賃相場が高いからです。「トンローに住んでいる。」と言えば、一目置かれてしまう高級レジデンシャルエリアなのです。
無職の長期滞在者や現地採用の方々(差別する意図は皆無です)には、家賃相場が高すぎて自分のポケットから出すには無理のある額です。日系企業の駐在員は十分な住宅手当を会社から支給されていますので、それに合わせて現地の住まいを決定します。会社にもよりますが、一流上場企業であれば、前回ご紹介したEight Thonglor ResidencesやQuattro by Sansiri等のセレブ物件の賃貸が可能な住宅手当が支給されるわけです。
前置きが長くなりました。改めて、何故トンロー地区では駅近物件が必ずしも賃貸上のアドバンテージを有していないのか?それは会社から運転手付きの乗用車が支給されるからです。
何とブルジョア的な待遇、と思ってしまいますが、これはリスク管理上の判断によるものです。東南アジアの主要都市では、渋滞、守られない交通法規、めちゃくちゃな運転マナーが当たり前ですので、その結果として交通事故が多く、駐在員の自家用車の所有、及び自らの運転行為を禁止しているのが一般的です。
とは言え、多くの駐在員は郊外の工場へ通勤しなければなりません。その結果が運転手付きの乗用車の支給となります。もっとも街中で勤務する商社、銀行系の駐在員も運転手付きです。とにかくバンコクは運転手付きなのです。
日常の足は運転手付き専用車を使いますから、必ずしも駅近である必要は無く、それ以上に買い物に便利なスーパー近、外食に便利な日本食店近、等の優先順位が自ずと上がってきます。
ご家族世帯においても、奥様はスーパー近、乳幼児のいる世帯や家族計画中の世帯は日本語病院近、就学児童のいる世帯は学習塾近、等が優先されてきます。という事で、トンロー地区では、トンロー駅周辺よりも、トンロー通り中心部、ソイ(通りの事)言えば偶数は4~18、奇数で言えば13~21辺りの賃貸需要が強いのです。
アソーク、プロンポン、エカマイでは、スーパーやレストラン等も駅近に集中している為、トンローとは違い、迷う事無く駅近が選ばれます。トンローだけが駅から離れた場所で先に街が形成された背景があり、それが賃貸市場に大きく影響を与えているのです。
実際、2010年にトンロー駅直結の大型コンドNoble Remixが完成するまでは、駅周辺にレジデンシャルビル等と言うものはありませんでした。
しかしNoble Remixの登場と共に日本人賃貸マーケットに微妙な化学変化が起こりました。多くの日本人がこの駅近物件に殺到したのです。
それでは、どのような日本人が駅近物件を求めたのか?
1. 駅近神話から意識が変わらない方々
駅近絶対の人は世の中に多く、実際この物件を借りてBTSを利用しない日本人は非常に多いのです。
2. ご夫婦世帯(お子様無し)
ご主人が仕事中にBTSを自由に使ってバンコク市内を巡りたい、といった奥様の強い要望があるケースも少なくありません。
3. シェアリムジン駐在員
一流日系企業といえども、最近はコストセービングの一環として、運転手付き専用車は2人で1台、3人で1台、とするケースも増えてきました。そうすると休日は自由に使えないので、駅近を希望するわけです。
Noble Remixに続きSiri at Sukhumvitがオープンし人気爆発、2012年にはKeyne by Sansiri、2013年にはAshton Morph、今年に入り、The Crest Sukhumvit 34が完成。人気度は物件によりバラツキはあるものの、トンローの駅近コンドの地位確立に至ったのです。
バンコクに住む日本人はモグリを入れない大使館登録人数のみで6万人。その居住者のニーズも幅広く、トンロー駅近物件の供給に十分に値する潜在層がそこにあった、という事なのでしょう。
現在、トンロー地区では、トンロー通り周辺に次ぐ第2エリアとして駅周辺の物件が選ばれるようになっています。めでたし、めでたし。
トンロー地区における賃貸市場の背景の話がついつい長きに及んでしまいました。
物件毎のご紹介は次回にまわします。悪しからず。

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