地価が上昇する条件。バンコクと日本の状況を照合してみる③

タイ人の住宅ローン状況
昨日はコンドミニアム購入のお客様の案内で、パタヤ→シラチャ→パタヤ→シラチャと1日で2往復しました。バンコクから向かうと、早くて1時間30分、渋滞があれば2時間。それ以上かかることもありますが、概ね2時間見れば大丈夫なのですが、昨日シラチャを出たのが17時30分くらいになりました。この時間は各工業団地から帰宅の車で渋滞が起こるので最悪な状況を予測していました。
お客様はその日のうちに飛行機に乗るので遅れるわけには行きません。しかし過去例にないほどスムーズに車は流れ、1時間15分程でバンコクに到着しました。渋滞の予測がしにくいといわれるバンコクですが、稀にこんな日もあります。
さて今回はタイ人の住宅ローン事情。
大丈夫だろうか? と思えてしまう内容の元に住宅ローンを借りています。
外国人が住宅ローンを利用する場合、金利が高く6%前後。日本であれば1%前後で借り入れることが出来るので、この金利では借りることに躊躇してしまうでしょう。一般的な借入期間は最長20年まで。中にはそれ以上借り入れできる商品もあります。
タイ人の場合いくつか種類があるので平均的に5%ほどですが、2、3年目と金利が上昇していくパターンが目に付きます。
借入れ可能額も日本と異なり、日本であれば物件価格の100%が通常です。タイの場合は評価額の6割から7割です。評価額は日本同様実勢相場より安いので、物件価格から鑑みると実際に借り入れできる金額は6、7割より少なくなるでしょう。
ただ価格差がタイと日本の場合は激しいので、東京23区域であれば3~4,000万円、若しくはそれ以上の借り入れとなる場合が多いのですが、タイの場合、一般サラリーマンの購入価格帯は100~300万バーツですので、現状のレートで考えると363万円から1,089万円当たりの価格となります。
ここで大きく異なることが、金融機関によっても異なりますが、日本の場合住宅ローンの取り扱いとして基本ラインは床面積50㎡以上が対象となる、という点です。加えて気を付ける点として、マンションの面積表記は専有面積と壁芯面積とありますが日本では壁芯面積となります。仮に銀行が専有面積で可能でも住宅取得控除は壁芯面積となりますので留意が必要です。
ある営業マンがその知識がないままに、住宅取得控除を利用できますと言って契約してしまい、後に利用できないと分りうろたえている姿を見たことがあります。その後どうなったかまでは覚えていません。
タイでは日本のように面積規制はありません。1ベッドルームが中心に売れている、2ベッドルーム以上の高額物件となれば富裕層が購入している、というのが最近のコンドミニアム市場の傾向です。富裕層の方であれば住宅ローンを利用しているケースは稀かと思います。
よってタイ人の場合、低価格帯中心に住宅ローン利用率が高く借入額は少ないのです。
では上記5%を例にとって計算して見ます。
100万バーツの借り入れ 期間20年
月々支払額 6,766バーツ(24,088円)
年間返済額 81,195バーツ(296,363円)
・平均的年収 一般層 約30万バーツ(109.5万円)返済比率 27%
・ミドルクラス層 約42万バーツ(153.3万円) 返済比率 19.3%
提唱してきた返済比率25%から鑑みた場合、ミドルクラス層であれば問題ない支払いとなりますが、数年後には6%の金利となりますので、この際の返済比率はミドルクラス層において20.4%で数字上は安定的支払額といえますが、一般層の方にはとても厳しい支払いが待っております。
しかし200万バーツを借りたとすると、これはミドル層でも40%を超過するとんでもない返済比率となるわけですから、結果から見ると、
一般層 借入額100万バーツ以内
ミドルクラス層 借入額130万バーツ以内が妥当といえるでしょう。
現状のタイ人の売れ筋価格は200万バーツ前後と考えています。タイの場合評価額の70%が借り入れ可能額となりますので、
200万バーツ×7割=140万バーツ
実際は評価の7割ですので、評価にもよりますが140万バーツまではローンが降りないと考えるべきでしょう。
基本的にタイ人の考え方は、今まで不動産価格が上昇の一途をたどってきたので、リスクに対する発想がかなり乏しいと思います。
支払えなくなったら売ればよいというマイペンライ的考え方、方や日本人は購入の際今後の成り行きをネガティブに捉える方が多いと思います。それは今までの経験の中で、不動産価格下落の怖さを知っているからで、当然の心配と思いますが、それをタイ人に話すと、「まず大丈夫だよ。」との答えが返ってきます。
今後の展開として僕が想像するのは、
良い面
① 現状の開発ラッシュが続いていく以上、価格の上昇は引き続き上昇曲線であると思います。
② 今までは富裕層の買い物であったのですが、ようやく一般タイ人はコンドミニアムを購入できる
収入になってきたわけで、いうなれば日本の昭和30年代。これが簡単に終焉を迎えると思えません。
悪い面
① コンドミニアム建設ラッシュにおいて、人気物件、不人気物件が明らかになっていくと思われます。
今回最も書きたかったことで、ここ5年以内で住宅ローン破綻者が増え続けていくのではないかと思えます。
日本でもその昔、住宅金融公庫のステップ払いでは住宅ローン破綻者が相次ぎました。当初5年間支払額が安く、それ以降は倍近い金額を支払っていくわけです。
僕もステップ払いを利用しましたが、5年に到達する前に全て銀行に借り替えました。そのまま支払っていたら期間も最長20年ということもあり、相当厳しい支払いになっていたと思います。
タイも金利は上昇していく支払い形式なので、収入に見合った支払い金額でない方は破綻の可能性はより高くなっていくものと思えます。
日本、タイの場合も支払えなくなれば、売却するしかありません。しかし残債を全額抹消できなければ売却することは出来ません。
日本の場合購入した金額より下回る場合が大勢を占めましたが、タイの場合は支払いに窮した時に売却するに際して価格が上回っている可能性は高いわけです。よっぽど浪費をしなければ最悪の状況に陥ることはない数字ではあるのですが、タイ人の場合それが有りえるのです。買い物や浪費は大好きな国民性です。
その証拠としていたるところにモールがありその多くは賑わっていることと、優しい国民性が災いして借金を断れない傾向等の背景もあります。
日本人もバブル時は過去前例を見ないほど国民全体が浮かれ状態に陥り、普段使ったことのないお金を使い自分を見失い、多くがその後の状態を想像できず泡のように財産を失っていきました。
リーマンショック時には、その経験を生かされた今後の流れを予測し、逆に資産を増やされた方も多く見受けました。
今後も、予想としては不動産の好況はまだまだ続くものと考えられますが、見失ってしまったタイ人が住宅ローン返済に行き詰る可能性が十分に考えられます
よって今後日本同様に不動産買い取業者が増えることを僕は予想しています。
ステップ払いやアメリカのサブプライムほどひどい内容ではないですし、確かに住宅ローン金利は高いのですが、預金利子も高ければ株の配当も高いのでその辺りのバランスは取れてはいます。
サブプライムといえば、その影響は世界中に流れ出したわけですが、そのような心配は極めて少ないと思います。
その理由として次の2点が挙げられます。
① 日本人居住区を中心に地価が東京並みというところを外れれば、まだ100万バーツ台からバンコク都内で新築物件が購入できます。負債となったとしても金額的に大きくありませんし、またその場合でも先述の通り購入金額以上で売却できる可能性があります。
② まだ開発中の駅や商業モール等地価上昇に欠かせないアイテムが、国のバックアップでどんどんできてきています。
今回僕が指摘しているのは、経済状況において下落していくということではなく、タイ人自体の性格的な問題です。マイペンライ精神(何とかなるさ、大丈夫さ)が、本来計画性が重要なホームローンの返済において悪い状況とならなければ良いと思います。
もし破綻者が相次いだ場合は多くの物件は高く売れると思うのですが、即金が必要となった場合買い取り業者の需要が高鳴ると思います。
よって日本人が購入する場合も、好況下のタイ不動産ですが、無理な資金計画をしないこと、そして信頼できる不動産業者を利用して物件選別も慎重にするべきだと思います。
次回はこのシリーズ最終章でまとめと今後の展望について書かせて頂きます。

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