日本の住宅ローンを持ちながらタイのコンドに投資する②

第2章 難儀であったベッドタウンからの買い替え事情
第1章においてタイと日本の住宅ローン事情を書きましたが、今回は通勤時間に窮して郊外ベッドタウンから23区域の不動産に買い替えを望んだものの難しい結果が相次いだ実話を紹介したいと思います。
このような状況が展開する事は、昨今の日本の場合いつ起こるかわかりません。代表的な例として、1986年から始まったバブル時代、そして2008年9月のリーマンショック‥等が挙げられます。
両社共に大きな打撃を不動産業界、そして金融業界に与えました。私の周囲でもクルーザーを買った、ヘリコプターを買った等といった方々が泡のように消えていきました。
リーマンショック終焉時は、毎日のように有名不動産業者が倒産していき、数日前まで新しいマンション用地の話をしていた仲の良いディベロッパーも帝国データバンクの倒産情報に掲載されている、といったことが連日起きていたことを記憶しています。
しかし、バブルを経験し、そこから学んだ優れた不動産会社のオーナーは、続々と倒産したこの時代を生き残っていきました。
その方法はこの話の最後の方でお伝えします。
第1章では10年間無料で住む賢い購入方法の話をいたしました。
そして今回はリーマンショック後の暗の部分に触れます。ベッドタウンに購入していた方の買い替え事情についてと、今後同様のことが起きた場合の防御方法についてお話させて頂きます。
ベッドタウン。特に千葉、埼玉、神奈川において主要沿線ではない地域において起こったことです。
多くのベッドタウンでは、分譲マンション供給は少なく一戸建てが多くなります。その理由はベッドタウンではマンションを建設できる高さ制限が厳しく、いわゆる第一種低層住専、第二種住専系が多く、建蔽率50もしくは良くても60%と規制が設けられています。容積率100良くて200%。高さ制限も一種高度地区が多くを占めますので、
規模の大きくない賃貸マンションは出来るものの、総戸数を多く必要とする分譲マンションは、この内容ではとてもできにくい環境にあります。
低層マンションしか建築できない都市計画の場所であれば、総戸数を確保できない為、不動産業者としては相場の50%以内ほどの金額で土地を購入できなければ利益につながらない、というのが一因ともなっています。
相場の50%でも売却したいというオーナー?そうは現れないと思います。
一般的に用地購入の為にマンションディベロッパーが購入する相場は、一般相場の7~80%以内です。(総戸数がどれだけ稼げるかによって大きく変わりますが。)リーマンショック前の時代は一般相場の100 %以上どころか150%以上なんてこともありました。一般相場より高かったのです。クレイジーでしたね。
ベッドタウンには有り余った土地が多いので、一戸建ての場合、大規模開発で全50棟とか100棟とかのニュータウンになることが特徴です。一方、23区域になると全5棟を越えるような物件は中心になればなるほど少なくなります。
ベッドタウンにて一戸建て築浅物件が売りに出ることが多い理由は、やはり通勤時間が挙げられます。買って住んでみたは良いが、通勤の大変さを思い知らされます。その為通勤地に近いところに買い替えをしたい、といった相談がリーマンショック後に数多くありました。
しかし、これはとても難儀なことでした。
リーマンショックによりあっという間に23区域の物件価格が下落しましたが、ベッドタウンも同様に下落を重ねました。重ねたというのは、23区域は時間と共に下げ幅も落ち着いたのですが、ベッドタウンは中々下げ止まりませんでした。
その理由は23区域の物件が下落することにより、買い求めやすい価格帯となりベッドタウン物件を購入するより多くのお客様は都心近くに求め出したわけです。その結果、ベッドタウンでは購買意欲がそそられる価格帯になるまで下げ止まらない状況に陥りました。
もちろん消費者の目に留まるような金額まで下落することにより、再び売れ出すのですが、その頃には所有者にはとてもがっかりする金額になっています。
消費者も賢いなと思うのは、どの地区でも買い頃の価格になると、まるで示し合わせたように購入に走ります。
特に初めての不動産購入の方にとっては、23区内が低価格にて購入できる時代が到来したことになります。この時代でなければこんな場所の物件を購入できない、といいた発想の中、若年層から購入していく次第でした。自らコンサルティングしながらも、羨ましいと思っていました。
買い替えの方は、全般的に自宅の売却価格が下がり苦戦しました。特にベッドタウンが自宅の方には、とても難しい結果となってしまいました。
地価が高い時にはベッドタウンが売れ、安くなると23区域が売れる。
そしてベッドタウンを売却して都心近くに購入を考えた方たちは、販売できる価格よりかなり住宅ローンの残債が上回るといった困難に直面します。住宅の売却には、ローンを全額返済しなければ所有権の移転は出来ません。例えば売れる価格2,000万円、残債3,000万円であれば1,000万円を自己資金で調達しなければなりません。
全額返済においての不足分を調達できれば、再購入の際の頭金は0円でローンを組めたので何とかなるのですが、ベッドタウンの価格は軒並み1,000万円以上下落していました。数年前に家を購入したばかりの一般サラリーマンの方が1,000万円前後を捻出するのはとても難しいことです。調達できた方の多くは親からの資金援助という形でしたが、それも実行できたのは極少数の方々でした。
買い替えが出来なければ、通勤状態は変わらないわけです。後悔してもどうにもならないわけで、僕らもそれ以上話を進めることは出来ませんでした。
1つ例を挙げると、千葉県では人気のベッドタウン。通勤が大変で都内の価格が下がったことで買い替えを検討したい、との相談を受けました。
今となっては、全てはっきりと内容を覚えていませんが、5年前に購入して、その当時の価格が3,000万円近かったと思います。残債が約2,000万円。本人売り出し希望価格は、残債が消える2,000万円でした。
僕自身は都心に程近いところで活動していたので、その周辺相場は理解しておらず、すぐに調べたところリーマンショック後、既に新築一戸建ての価格が2,000万円ほどとなっていました。すぐに気づきました、買い替えは難しいと。
というのは、新築が2,000万円であれば築5年と言えども、中古として売れる価格としては1,300万円前後ではと想像がつきます。親しい地元の不動産業者に確認すると、予想通り売り出し価格1,280万円、成約価格1,200万円以下。
と言うことは、抵当権を抹消するのに800万円以上の自己資金を用意する必要が生じます。他の選択肢としては、銀行ローンの商品の中で残債分を次の購入した物件に上乗せできるローンもあったのですが、その商品の規定は厳しく、相当年収の高い方でないと利用することは難しいのでした。
そのときのお客様もそのローンを利用するに当たり、少なくとも1,000万円以上の年収が必要で、様々な努力をしてみましたが、結買い替え計画を断念せざるを得ませんでした。
これは1例であり、このような相談を数多く受けました。普段あまり訪れることのない地域に、物件調査の為に良く出向いていたのを思い出します。
安くなった23区域、毎月の支払額も難しい金額ではなく、毎日の通勤がとても楽になる。目の前にぶら下がっているのに現在の持ち家の残債がネックとなりそこにたどり着けず、忸怩たる思いのお客様の顔を今でも思い浮かべます。最後通告をするときは、やはり僕らも辛いものです。
逆に23区域で築浅マンションを購入した方々は、リーマンショック直前くらいで購入していない限り、下げ止まったあたりの価格でも購入時とほぼ変わらない価格で流通できたので、買い替えもスムーズに行えました。
また、23区域で築浅マンションが良く売りに出される要因は次の通り。マンションを購入すれば管理費と修繕費を住宅ローンと別途に支払うわけで、現在の銀行金利に換算すると約1,000万円前後余分に借りている計算となります。
3,000万円で購入したけど、実際は4,000万円前後分の支払いをしていることと同様の計算になります。
一戸建てを購入すれば管理費修繕費は必要ありません。そこでお客様は気づくわけですね「東京都内に一戸建て」を購入できるではないですかと。
既に不動産購入経験のある方は、初めての購入こそ慎重となり疑心暗鬼にもなったでしょうが、2度目以降はもう慣れたもの的になる方が多く、見る目も養われていますのでお目に叶った物件があれば結論も早いですね。
確かにそれによって借入額は高くなるのですが、一戸建てと違いマンションを持ち続けていても管理費はなくならないどころか修繕費は上昇していく可能性が高いわけです。
「一戸建てでもメンテナンスのお金は自ら支払うのではないですか?」といった質問も多く受けました。確かにその通りです。しかし建築基準法は進化しています。姉歯事件以降はより厳格となり、不動産ディベロッパー泣かせの厳しい法律が出来ました。
それにより一戸建てのメンテナンス費用はかなり軽減されたと思いますし、保証も多く長期的にも安心して暮らせるほど強固な建物になったと共に、いわゆるダメ工事、手抜き工事の類いは相当数減ったと思います。
姉歯事件以降の改正で、アフターメンテナンスの為のお客様からの連絡は激減したことを覚えています。
完全に明暗が分かれた2例となりましたが、防御策として以下をお勧めします。
① 価格の高い時期には手を出すな。

昭和から平成の住宅価格推移は十分すぎるほど不動産業者にはデータがあるので、現在では簡単に推移が調べられると思います。
しかしそこは人間心理。まだ上がるのではないか?そう思ってしまいますよね。
リーマンショック前は不動産買い取りにおいてもクレイジーな価格で取引されていたことがたくさんありました。
② リスクマネジメントをしておくこと

リスクマネジメントについて参考になる内容を次回リーマンショックを切り抜け成功した賢い不動産業の社長達の話で触れて行きたいと思います。
バブル時の勉強と経験を下に、リーマンショック前に高くなる可能性が十分にある物件の紹介をしても、予め定めた自社の規定に少しでも外れていれば頑なに購入を控えた賢い不動産業者のオーナーの姿も数多く見かけました。
結果、その方たちはリーマンショックを切り抜けたどころか、十分な資産を蓄えたのです。僕自身が自信を持って紹介した物件を購入しない、という判断に僕自身も忸怩たる思いに駆られましたが
リーマンショック終了後彼らが起こした行動に、恐れ入りました、と頭を下げる思いでした。その行動により、より安定した収入を得られるようになるのです
③ 良い営業マンを探せ

出会った営業マンの対応如何で自宅の購入は大きく左右されます。良い営業マンであれば予算の中で将来的な展望をして再販売でも売れやすい物件をチョイスしてくれるはずです。その際にはしっかりと将来的には買い替えも考えたいと伝えておくことが重要です。
僕の経験論として、自宅を購入する方の多くは買い替えなんて考えておらず、一生住むつもりで、と言います。確かに購入した早々から次のことも考えている方は少ないとは思いますが、そういう方たちが買い替えの相談に来ることを何度も見ました。特にマンションの方は購入後5年以内に相談しに来ることがしばしばありました。。
僕自身、「私は買い替えしない。」というお客様の言葉は全く持って信用していませんでした。
大手だから良い営業マンとは限りません。地元の地場不動産会社にも一生付き合っていきたいと思えるような営業マンはいます。
不動産物件以上に妥協してはいけないポイントだと思っています。

次回第3章は、リーマンショックを乗り切った不動産オーナーの行動とは?を紹介したいと思います。

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